兄と同じ家にいるのが怖い

新型コロナウイルスの影響で多くの人の生活が脅かされています。今回、牧村さんのもとに寄せられた相談は、「住む場所がなくなってしまった」というもの。実家に帰ろうにも、過去に兄がしてきた行為を思うと恐怖に身がすくみ、「実家には絶対帰りたくない」という相談者さん。どうしたらいいかと悩む相談者さんに牧村さんは優しく寄り添いながら、具体的な解決策を考えていきます。

※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 着物スタイリング:渡部あや

「あなたのことが大切だから言ってるんだよ」
という、優しい支配。

毎週水曜連載「ハッピーエンドに殺されない」。この頃は、「みんなに#STAYHOMEとか#家にいようとか言われるけどその家こそが別の意味で危険すぎて無理」というご投稿がたくさん寄せられております。

家が無理すぎるシンデレラ。おとぎばなしでは結婚により脱出を果たしたわけですが、かぼちゃの馬車も運休です。王子を待っちゃあいられねえ。ってか、王子様だった人が結婚後に魔法解けてやべえ正体をあらわすこともよくあることなので、万一のためにも持っておきたいものです、自分の城を築く技術を。

裸足で走るシンデレラ。今回は、「“実家の近くでの一人暮らしなら許可します!合鍵も作ったから!!”という感じの両親と、妹である自分に手を出してきた信用できない兄から離れ、友人とシェアハウスすることで自分のお城を築いてきました。なのに……」という20代女性の読者さんと一緒に考えていきます。

城、築こう。
崩されたって、何度でも。

ここを俺たちシンデレラ(性別不問)の秘密基地とします。さ、作戦会議していきましょう。まずはお話を伺っていきます。

まきむぅさんこんにちは。書籍からまきむぅさんを知り、今ではTwitterの言葉に元気を貰い、連載の文章に生きる勇気と知恵をもらっています。いつも私の心に染み渡る素敵な言葉をありがとうございます。

私は現在いくつか精神病を抱えて生きている20代の女性です。その病気の1つに、記憶が無くなる事がある、その間は私と考えや感じ方の違う私がいる事もある、というものがあります。わかりやすく言うと多重人格です。

多重人格と診断される前から、不眠症とうつ病で薬を飲む毎日でした。 最初は記憶が無くなる事にも気付かず「あれ?昨日寝る前なにしてたっけ?」「この本ここに置いたっけ?」「最近物忘れ酷いな。」「薬の副作用かな…」位の感覚でした。

でもその症状はどんどん酷くなり、「寝る前と着てる服が違う。」「切った記憶のない場所に切り傷がある。」「昨日寝る前に何か食べた気がする…何を食べたか思い出せない。」

記憶が飛んでいたり、曖昧な事がどんどん増えていきました。 次第に眠る事、眠るために薬を飲む事も怖くなってきました。うつ病の症状も酷くなり、不眠症も酷くなる事で記憶が曖昧な時間も増える。負のスパイラルです。記憶が無い間に自分が何をしているのかわからない。知らないうちに誰かに何かをしてたらどうしよう。自分でつけた覚えのない自傷痕が増えるのも怖かったです。

「私が眠るギリギリまで誰かに私を見張ってて欲しい。」 私はそう思いました。ですが、人と同じ空間で眠る事が苦手なので誰かの家に泊めてもらうのは難しいです。それに私が眠るのは深夜や明け方がほとんどなので、友達や両親に迷惑をかけるので頼めませんでした。なので、夜型生活をしていた兄の部屋に行き眠くなるまで話してもらっていました。その時話した内容も次の日起きた時には曖昧でしたが、私が何もせずに眠れたと思い安心出来ました。

そんな日が数日続いたある日、起きた時に自分では信じたくない記憶が微かに残っていました。 「昨日、私は兄と、性交渉をした、かも、しれない…」頑張って記憶を辿っても曖昧であやふやな記憶しか残っていませんでした。自分ではこの記憶が現実なのか夢なのかもわかりません。なので、兄に直接昨晩私は何かしたかを聞きに行きました。返答はYESでした。信じたくなかった。信じられなかった。自分も、兄も。

その後も症状は酷くなる一方でしたが、もう誰にも頼れません。誰にもこんな事言えない。兄と同じ家に居るのも怖かったです。自分の1日の記憶を保っている事も出来ませんでしたが、私は無理矢理両親を説得して家を出ました。泣きながら、「一生の頼みです、理由は聞かないで私が一人暮らしするのを許してほしい」そう言いました。 体調が悪い時は1人では生活がままならなくなる事もあります。両親は目の届く範囲にいてほしいと実家からすぐの場所に合鍵を渡す事で私の一人暮らしを許しました。 私は数年間、私自身を閉じ込めるようにその家で暮らしました。でも、その家にいれば私は傷つかない、誰も傷つけないし巻き込まないで済む、ここは私のお城だと思いました。 ゆっくり時間をかけて、たまに酷い状態になりつつも、私はなんとか人並みに自分1人で1日を過ごせるようになりました。

そうなると実家の近くに住んでいるのが私の負担になりました。一人暮らしの家だとLINEの返信がしばらくないと家族が家に来たり、たまには実家に帰ってこいと言われる事が多かったからです。あの出来事があってから私は兄を信用出来ず、その後少し話す事はあっても根本的に考えが違う人なんだとむしろ嫌悪してしまっています。私にとって兄は、男性は、恐怖の対象になりました。顔を合わせなければいけない家族の集まりは今でも気が重く出来るだけ参加したくないと思っています。

私は、病気や家族の事を知ってる幼馴染や事情を知っており私が同じ家で眠れる気心が知れた友達と離れた所でシェアハウスする事にしました。両親を説得するのは大変でしたが、幼稚園からお互いや両親を知る幼馴染の力もありいくつかの条件付きでなんとか地元を出る事が出来ました。全てが順風満帆とは言えませんでしたが、シェアハウスは楽しく、私も何かあった時に頼れる人が身近にいてくれる事にとても安心して生きていれました。相変わらず記憶が飛ぶ事や眠れない事もありましたが、1人で暮らしている時よりずっと病状も安定していたと思います。

でもその期間も終わりそうです。友達の1人が結婚の話が出ている事や、仕事の関係でシェアハウスの解消が決まりました。その後幼馴染とルームシェアする話になっていましたが、今回のコロナ騒動で仕事が激減した事でその話も流れてしまいそうです。住む場所がなくなる私に両親は1度実家に帰ってくればと言いました。未だ兄の住む実家に。

誰かと暮らしていたい。でも頼れる友人達は自分の人生を進んでいきます。私にはそれを止める事は出来ませんし、したくないです。ですが同じ家に暮らしてて安心して眠れる相手ももういません。これ以上他の人に迷惑を掛けられないとも思っています。でもここを出たら、私には安心して生活出来る家がないんです。実家には絶対帰りたくない。ですが、一人暮らしを許されるとしても実家の近くです。もう私は怖いんです、嫌なんです、実家に近づきたくないんです。そう思っていてもこの家を出る日は刻一刻と迫っています。私はこの先どこに帰ればいいのでしょうか?私はどうすればいいのでしょうか??私が安心して生活出来る場所はあるのでしょうか??

長文、乱文失礼いたしました。 少しでも誰かにこの状況を聞いてもらいたくて…何か意見を言っていただきたくて、ここに書き連ねさせて頂きました。 回答いただけましたら幸いです。

(プライバシー保護のため、一部編集して掲載しました)

2020年4月16日にいただいたご投稿です。
届きましたよ。この連載の読者さんにも届いているはずです。 ありがとうございます。話してくださって。

まず二つ、思ったことがあります。

その「愛情」から身を守ろう

ここは私のお城だと思いました。 ゆっくり時間をかけて、たまに酷い状態になりつつも、私はなんとか人並みに自分1人で1日を過ごせるようになりました。

これ完全に、実家離れることでこそ回復してるやつやん。ということと、

・友達や両親に迷惑をかける
・これ以上他の人に迷惑を掛けられない
・誰も傷つけないし巻き込まないで済む

これ完全に、「あなたは親がついてないとダメ。みんなに迷惑かけちゃダメ。親の言うこと聞きなさい。あなたを想って言ってるの。ね。」的な育てられ方してるやつやん。ということです。どうですか? 合ってると思いますか?

マジで身を守ろうね。追い詰められたウサギは自分の産んだ仔を食べてしまうのですが、人間も同じです。「頼られて必要とされてる感じ」を得るために我が子を食らう人間マジでめっちゃおるから。マジで。

それもそれでその人間が生きるための防衛機構なのですが、食われる側の人間としてはたまったもんじゃねえわけです。そういう親子関係のことについては過去記事「母に何を相談しても否定される」を貼っておくとして、今回は、どう身を守るか、を考えましょう。俺ら、シンデレラ(性別不問)。

さて。

家。城。

家、という漢字の熟語はいろいろありますね。 実家。国家。
城、という漢字の熟語もいろいろあります。 籠城。築城。宮城。茨城。

現在の状況、わたしはですね、作戦会議ホワイトボードに「実家× 築城×」とまとめます。実家が無理。だから城を築いたけど崩れた。って状態。

じゃ、家、城、どうしよう。いろいろ作戦はあると思いますが。わたしからご提案したいのはこれです。

「国家☆ 籠城☆」

順番に行きますよ。

「実家」を取り巻く「国家」を見据える

まずですね、実家でなく、国家の制度をフル活用します。

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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

murasabi00 知識のある人は、こういう具体的な対策を教えてくれるのですごい。 5ヶ月前 replyretweetfavorite

Arrrrrrcc 泣いちゃった 親子関係の部分で 俺たちシンデレラ(性別不問)は、実は自力で城築けるんだぜ… 5ヶ月前 replyretweetfavorite

miss_buchi25 自宅待機が推進されている今、自宅が安全ではない人が世の中にはたくさんいるってことをもっと知って欲しいと思う。 https://t.co/5DEPrOSDWi 6ヶ月前 replyretweetfavorite

ac7kurage 「わたし」を生ききるための知恵が書かれています。 家が辛い多くの人に届いて欲しい。 6ヶ月前 replyretweetfavorite