こだわりから自分を解き放つ
私が「反転」ということを言い出したのも、こういった影響をいろいろ受けてきたからです。反転とは、逆の考え方をすることだけでなく、こだわりから解き放たれることでもあります。
DVにパワハラ、これまでに何度も性的被害や嫌がらせなどを体験した女性がいます。心理治療によってだいぶ気持ちが回復してきて、働けるような状態になったのですが、そんな矢先、またしても被害に遭ってしまいました。
文才がある人なので、「自分の味わった苦しみ、この経験を小説として書く、本を書くのが自分の経験をプラスに活かす道だ」と言っていたのですが、あるとき突然、吹っきれたように言ったのです。
「先生、私、小説書くのやめます。こだわるのはやめます、もういいです」
つらい経験に対するこだわりから、ふっと解き放たれたようなのです。何が起きたのかなと思っていたら、どうも体を動かす仕事に就いたことがよかったようなのです。
「私、自分が頭でっかちだったことに気がついたんです。これまで頭でばかり考えて、体のことを忘れていました」
毎日、体を使って疲れて帰り、ごはんを食べ、お風呂に入ってリラックスすると、眠くなる。そんな毎日の中で、自分の負の体験を小説に書くという気持ちがだんだん薄れていったのです。「もういいや」という気になった。とらわれを手放すことができたのです。