さまざまな困難を抱えて生きる人々を、
とりあえず「雇ってみた」
藤野 アイエスエフネットでは、履歴書を見ずに採用をすると聞いたのですが、本当ですか?
渡邉 はい。無知識・未経験者を採用して育てる方針なので、応募者の前歴は関係ありませんからね。でも、履歴書を見ずに採った人がすごく優秀だったので「すごいね、前は何してたの?」とあとから聞くことがありました。すると、「僕は引きこもりでした」「実は障がいがあるんです」と答える人が多くいたんです。字が書けなかったり、アスペルガー症候群だったり、てんかんの症状がたまに出たり、いろいろな来歴を持つ人が来てくれていたことに気づきました。彼らはものすごい戦力になってくれていたのですが、おそらくこれまでは履歴書の段階で落とされてしまうことがよくあったのでしょう。
藤野 そうでしょうね。
渡邉 そういう人ほど、ロイヤリティが高くて、会社の価値観を共有してくれることがわかりました。すると、会社がひとつの方向に向かって、強くなる。そして、会社が成長していく。だったら、むしろ就労困難者を採用した方がいい、とスイッチが入りました。今では、従業員の約3割~4割が元就労困難者です。
最初は、特例子会社(注1)であるアイエスエフネットハーモニーを、本社内でスタートしました。あるとき、中野区から特例子会社を誘致したいというお誘いがあり、中野区に事業所を構えたんです。行政が応援してくれるというのは心強いですよ。なにも支援がないところからスタートすると、事業所をつくるにも、住民の反対運動が起こることがあります。
(注1:障がい者の雇用に特別な配慮をし、一定の要件を満たした上で厚生労働省の認可を受けている子会社)
藤野 そうなんですか……。
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