レズ風俗業界は、外側から想像するような楽で簡単な仕事じゃないよーそんなことをわたしに教えてくれたのが久住だった。久住はわたしをこの業界に引き上げてくれた最大の功労者であり、そしてこの仕事を本業とするきっかけをくれた人だ。
選ぶというよりも手当たり次第にお店に連絡を取ってみるが、ほとんど返信すらない状態が続き、1店だけようやく返答がきた。やっと自分をアピールする場ができたと意気込んでいたら、相手の返答は硬くドライなものだった。セクは?いくら稼ぎたい?固定客持ち?なんでここで働きたいわけ?夜の業界は、連絡が簡素なところが多いが、それにしてもあまりある。トンチンカンな返答も多く、そこは危ないかも、と、面接もやめにしてしまった。そうしてたどり着いたのが久住の経営する「ファーストレズ」だった。HPのデザインも仰々しく、背景で下着姿のお姉さんたちが舞い踊る、風俗感満載のサイトで当初は避けていた店だったが、もう選択肢がない。場合によっては囮物件かもしれないとは思いつつ、問い合わせフォームから入店希望を送る。すると応募して数時間後にはすぐにLINEに連絡があった。
「応募ありがとうございます♫さっそく面接したいんですけどお日にちどうしましょ(^^)」
目を疑った。あれだけ漕ぎ着けるのが大変だった面接をあっさり提示してきた。拍子抜けしてしまって、本当にコミュニケーションのできる相手なのか確かめたくなった。「女性の心に寄り添えるサービスとこれまでの経験を活かした働きがしたい」という思いを風俗の業界では面食らうような硬い長文にして、LINEでぶつけてみる。しかし相手はまったくひるまず、「大丈夫です(^^)ぜひ一回面接に来てください‼」。
これまで相当苦労したからこそ、歓待されると逆に疑わしくなってしまう。内心怪しみつつもひとまず池袋で面接の約束を取り付ける。「3月某日、午後5時に池袋北口のロータリーで待ち合わせで。あ、身分証だけ持って来てください」
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