「大好きだから、会わないよ」
そんなキャッチコピーをインターネットやSNSで目にする。いわゆるコロナウイルスに感染させないため、大好きな人だからこそ今は会わないようにする、という心組みだ。おかげさまでというか、私は先月から今日まで、友人知人はもとより仕事の関係者にも、母や姉にも会っていない。電車にも約2ヶ月乗っていない。こんなご時世だから、別にいいのだ。皆が我慢していると思えば、私だって耐えられる。
これって実に日本人的じゃないか?
しかし、ふと不思議に思うことはないだろうか。在宅勤務やテレワークやリモートワークが増えたとはいえ、会社勤めの方で出勤がゼロになった方は、おそらくいない。やはり会社でなければできない仕事や、同僚や上司、または取引先の人に会わないとできない仕事はあるだろう。そんな時に発生するルールが、
「必要だから、会うよ」
だ。
「大好きだから、会わないよ」と「必要だから、会うよ」の差って何だろう。この微妙でいて大きな違い。これって実に日本人的じゃないか? と私は首を傾げたのである。こと、これが外国の方(どこの国とは限定せず、あくまでイメージですが)だと、「仕事だし、必要だけど、今は会わずして何とかこなそうかな」になるような気がするのだ。会社員生活とはとんとご無沙汰な私が指摘するなんて、とてもおこがましいのだが、「会わずして何とかなる」仕事も、あるにはあると思うのだ。
勿論、どうしても直接会わないと進行しない案件なんだよ! という職務だってあるだろう。でも、これは実際に知人から聞いた話だけど、「上司に印鑑を押してもらうだけで出勤しなければならない」とか。電子印じゃダメなの? と私は突っ込んでしまった。そういうのって、日本独特のような気がするんだけど。どうでしょう?
前回も書いたが、結婚していて、夫婦で、一緒に暮らしている(内縁関係や同棲も可)、といった、守られた関係ならいい。しかし、お互いがひとり暮らしの恋人同士が「大好きだから、会わないよ」のルールというか縛りを架せられてしまうと、ついつい「仕事で女には会うのに、私には会わないんだね」と思ってしまわないだろうか。逆も然りで、「仕事で男に会うくせに、俺には会わないわけだ」とか。まあ、わかっていますよ、仕事は大事だし、仕事をしないと生活できない。重々承知している。でも、あまりにも「会わない」に縛りつけられてしまうと、普通の精神を持ち合わせた人でも、普通の感覚じゃなくなってくる。
街中は閑散としているのに、ラブホテルは満室
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