先月、私はアダルトグッズに関する短編小説を書いた。内容は割愛するとして、諸々アダルトグッズについて調べていた矢先、出版社から「森さん、今、アダルトグッズが売れしているらしいですよ」との情報を得たのだ。ぶっちゃけ、想定内だった。ウケをねらってアダルトグッズをテーマに据えたわけではないが(割愛しつつ小ネタをばらしますと、いたって真面目でもの悲しい短編小説に仕上がっております)、「そりゃ、売れるだろうよ」と思っていた。
欲求を手っ取り早く解消するのはこれしかない
だって昨今、自宅でやれることって限られているじゃないですか。
外出自粛要請に緊急事態宣言、人と会うのは8割避けましょう、等々。つまりは、ひとり上手になれって意味だ。テレフォンセックスだ、オンラインデートだときれいごと(?)を言っていても、人と人が会わなければ直接的な性行為はできない。欲求を手っ取り早く解消するのは、アダルトグッズしかないのだから。
身も心も健やかに成長した成人男女なら、自宅にアダルトグッズのひとつやふたつ持っているのが普通(なのかな?)だし、特に目くじらを立てるものではないけれど。しかしスマホデビューや運転免許取得、みたいな社会的地位や貢献度にアダルトグッズは対応しない。今や超激務になってしまった宅配業者の手を、アダルトグッズ配送でわずらわせてもいいものか、そんな風に考える人もいるだろう。でも実際には注文が殺到しているのだ、だってアダルトグッズが売れしている、ってデータが出ているのだもの。
これまで躊躇していたけれど、「今が買い時!」とばかりに購入する人もいれば、「でももしコロナウイルスに感染して隔離されたら、アダルトグッズ買ったことが家人にバレてしまうのでは」と躊躇している人もいるかもしれない。だったら、「いかにもじゃない電マを探してみたらどう?」とか、「今は一見それとわからないオシャレなアダルトグッズも発売しているよ!」と耳元でささやいてあげたいが、所詮アダルトグッズはアダルトグッズ。家人や他人に知られては困る、っていう事情ももっともだ。
自分の殻を打ち破るいい機会かもしれない
でもなー、と私はちょっと考えたのだ。今まで、自分を取り繕って生きてきた人には、この外出自粛要請や緊急事態宣言は、自分の殻を打ち破るいい機会なのではないか、と。世の中には、「この機会に自分を深く見つめてみよう」とか、カッコイイことをいう方々がいる。うん、深く見つめるのも大事だけど、案外、浅くも見つめていないのが自分自身だ。だって皆、本当は、外に出て思いきりエッチなことしたいって思っているでしょう? 深く見つめようとしたら、うっかり上部しか見つめられなくて、一番最初に出てきた欲求が「やりてぇ!」だったりして。
世間はコロナウイルスで大変な事態になっていて、自分もいつ感染するかどうかわからなくて、キスはおろかセックスなんてできない、手をつなぐのだって濃厚接触になってしまう。現状、決まった相手がいて、一緒に住んでいる、結婚している、そういう守られた環境ならいい。ところが、恋人や想い人がいても、遠くに住んでいたり、自分もしくは相手が複数と濃厚接触している可能性があったりすれば、事態は暗転する。コロナウイルスが人間から搾取したのは、生きる源、セックスだったのだ。
いや、それだけとは言わないけれど、それもあるよね、と思う。で、世間が混乱する中「やりてぇ!」って一も二もなく激しく思ってしまった自分を責め立てる。世界各国がロックダウンして、禁を破ったら厳罰を受けたりする、そんな地球上で、自分だけが「やりてぇ!」だと? なんてこった、自分ってかなり低俗。がっかりだよ。いやだから、そんな風に自分を卑下してはいけない。素直でとてもいいことではないか。とはいえ、外に出て手あたり次第にやりまくる、というのは勿論いけない。いけないけれど、純粋な欲求「やりてぇ!」をないがしろにしてもいけない。
他人の目が気になるという人は
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