「プロフェッショナルのプロは、プロセスのプロ」
プロの世界は「結果がすべて」である。結果を残せなければ、収入も下がるし、職を追われることにもなりかねない。日本の企業で働く人々も、簡単に解雇されないまでも、数字で厳しく目標が管理され、結果が厳しく評価されることだろう。
プロ野球の場合で言うと、シーズン終了直後は連日、選手が戦力外通告を受けたというニュースを耳にするようになる。昨今は、一、二年で結果を出さなければ、監督ですらあっさりとその座を追われてしまうケースが多い。だから、大金をはたいて他球団から有力な選手を引き抜き、てっとり早く勝つという安易なチームづくりがまかり通る。
だが、結果を意識しすぎるあまり、その裏側にあるものを忘れてはいないだろうか。プロセス、つまり過程である。「プロフェッショナルのプロは、プロセスのプロ」であると私は考えている。よい結果を出すためには、よいプロセスを踏む必要がある。正しいプロセスがあってこそ人は変化できるし、よい結果も生まれるのだ。
別の角度から言えば、仮に、いい加減なプロセスを経てよい結果が生まれたとしても、それは単なる偶然の産物だろう。次に同じような機会でうまくいくとは限らないし、むしろうまくいかないと断言してもいい。
だから、私は監督時代には、選手たちにプロセスの大切さをしつこく説いてきた。具体的に言えば、準備を徹底するということだ。「一に準備」「二に準備」である。
例えば、バッターボックスに入る前、どのように準備すべきか。イニング、得点差、アウトカウント、ランナーの有無といった状況に加え、相手ピッチャーの特徴、性格、心理状態などを考慮しておく必要がある。
もろもろの状況を踏まえて「ストレートを狙う」と判断したとする。ほとんどの選手は、それで準備が整ったと考えてしまう。だが、私に言わせれば、それでは不十分だ。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。