ルーキー田中将大を我慢して使い続けた理由に隠された指導法の極意

野村は新人ピッチャー・田中将大をいきなり即戦力として起用した。そこには野村なりの信念があった。『野村の教え方 すべての指導者に贈る最後のメッセージ』から、日本プロ野球“最高の教師”の野村克也が指導法の神髄を語る。★毎週木曜日更新★

新人・田中将大を即戦力として起用した理由とは?

人は、失敗や敗北を糧に成長できる。私自身、さまざまな分野で名を成した人と関わる機会を得てきたが、いずれも大きな失敗を経験していたし、その失敗を乗り越えたというところに共通点があった。特に成功した経営者などに話を聞くと、そういった失敗談や苦労話を喜々として話しだすようなことさえあった。

むしろ、最初からあっさり成功を収めてしまうと、かえってよくないのではないか。プロ野球の世界でも、デビュー戦で華々しい活躍をした選手よりも、手荒い洗礼を受けた選手のほうが後々スターに成長していった印象がある。長嶋茂雄のデビュー戦4打席43振などは、その代表例であろう。

いまやニューヨーク・ヤンキースのエースとして信頼されている田中将大も、デビュー戦では6失点とほろ苦い経験を味わっている。私自身が「教え子」と呼ぶのもおこがましいが、ここで田中という投手の思い出を語ってみることにしたい。

私が田中の存在に注目したのは、彼が北海道の駒大苫小牧高のエースとして甲子園を沸かせているのを見てからである。ピッチングは粗削りだが、その分、まだまだ伸びしろがあるように感じられた。2006年の甲子園の決勝では、引き分け再試合の末、早稲田実業に敗れて苦杯をなめたが、優勝投手となった斎藤佑樹よりも、私には田中のほうがプロ向きであるように思われた。

当時の私が監督を務めていた楽天は、発展途上どころか、まだ出来たてほやほやのチームであり、一から陣容を固め直す必要があった。特に「勝てるピッチャー」を何とかしてそろえたいと考えていた。だが、現実には岩隈久志以外、先発の柱となるようなピッチャーがいなかった。だから、編成担当者には、何よりも先に即戦力になるピッチャーの獲得を要求した。そこで目をつけたのが田中だった。私の思惑通り、楽天はその年のドラフトで田中を引き当てることとなる。

田中は第一印象から、ある種の「オーラ」「雰囲気」を感じさせた。もっとも、高校を出たばかりのピッチャーだから、実際に投球を見るまで、すぐにプロで通用するのか半信半疑だったのも事実だ。

だが、彼のボールを見た瞬間、「これが18歳の投げる球なのか!」と驚いた

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古田敦也、新庄剛志、宮本慎也、稲葉篤紀、田中将大——。球史に残る名選手を次々に育て上げた名将・野村克也。日本のプロ野球“最高の教師”が「教え方」の神髄を語る。プロ野球ファンはもちろん、スポーツインストラクター、学校の教師、会社のマネジ...もっと読む

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outroad 田中投手、そうだったんだ。初マウンドで負けて泣いたのか…知らなかった。 4ヶ月前 replyretweetfavorite