天才・新庄剛志のやる気を引き出した野村の言葉

天才型の人間を指導するにはどうすればいいか? 扱いに困っている経営者や管理者に向けて、野村が新庄選手に実践した方法を語る。『野村の教え方 すべての指導者に贈る最後のメッセージ』から、日本プロ野球“最高の教師”の野村克也が指導法の神髄を語る。★毎週木曜日更新★

天才型の人間を指導するための心構え

世の中には、一握りの「天才」と呼ぶべき人間が存在する。プロ野球の世界でいえば、「圧倒的に速い球を投げることができる」「何も考えず、来た球を難なくはじき返せる」といった才能の持ち主を指す。

天才的な才能の持ち主というと、扱いに困っている経営者や管理職の人は多いのではないだろうか。何しろ天才タイプの人間は、自分の才能に自信を持っている。簡単には他人の意見に耳を貸さない。考えるより前に才能で仕事をしているから、考えるという習慣が身についていない。才気に走った人間の行動や思考がマイペースなのには困ったものであるが、せっかくの才能なのだから、教える立場の者は、本人が才能を生かしてさらに成長・進化できるように後押しすべきである

天才型の選手といって、真っ先に思いつくのは何といっても阪神時代の教え子であった新庄剛志だ。

新庄といえば、最近になって現役復帰を目指すという報道を耳にして驚いた。現役に戻りたいという気持ちは、私も50歳になるまで現役を続けようと思っていたから理解はできる。だが、冷静に考えれば無理に決まっている。「いくら俺はできる」と思っていても、周りはそう思っていないから許すはずがない。人は他人からの評価の中で生きている。人間は時代と年齢には勝てないのだから。

確かに私が出会った当時、彼は野球に関しては圧倒的な素質の持ち主だった。外野手として肩が強いのも魅力だし、とにかくほれぼれするくらいに足が速い。ただ、その才能からすると、成績はずいぶん見劣りするものだった。毎年の打率は2割台前半、特に私が監督になる前年の1998年は、打率2割2分2厘、ホームラン6本、打点27と、自己最低の成績に終わっていた。本人としても忸怩じくじたるものがあっただろう。

天才・新庄をその気にさせた大胆な「配置換え」

監督になって最初の秋季キャンプでのことだが、初対面の新庄に対してバッティングのアドバイスをしたことがあった。30分くらい話していただろうか、新庄が私の話をさえぎってこう言った。

「監督、ちょっと待ってください。一度に言われるとわからなくなるので、また今度お願いします」

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野村克也

古田敦也、新庄剛志、宮本慎也、稲葉篤紀、田中将大——。球史に残る名選手を次々に育て上げた名将・野村克也。日本のプロ野球“最高の教師”が「教え方」の神髄を語る。プロ野球ファンはもちろん、スポーツインストラクター、学校の教師、会社のマネジ...もっと読む

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