メモを取る選手は伸びる」という真実に隠された野村の哲学

メモをとることは大切。よく言われることだが、野村の指導法のひとつでもあった。そこからわれわれが学べることとは? 『野村の教え方 すべての指導者に贈る最後のメッセージ』から、日本プロ野球“最高の教師”の野村克也が指導法の神髄を語る。★毎週木曜日更新★

メモをとらないと記憶を捏造してしまう

私は現役時代から「メモ魔」と自負するほどにメモを活用していた。メモを取り始めたきっかけは、誰かの助言があったわけでなく、あくまで自主的な動機だった。

現役時代、ホームラン王を取った後に成績が伸び悩んでいた私は、“読みの精度”を上げることで状況を打開しようと考えていた。

そこで、毎晩試合が終わってから相手バッテリーの配球、ピッチャーの投球のクセ、バッターの特徴などを逐一メモに記録するようにした。

ピッチャーはキャッチャーのサインを見て、サインが決まるとグラブの中でボールを回して握る。真っすぐのときの握りと変化球のときの握りは違うから、一連の投球動作の中にほんのわずかなクセが出る。ただ、ピッチャーは自分のクセが見破られていることを察知して、フォームを修正することがある。動作のクセ、修正の記録も含め、気づいた情報を日々書き込んでいたというわけだ。

それだけでなく、なぜヒットを打たれたのか、なぜ抑えることができたのかを自分なりに分析し、それについても細かく記録した。

なぜメモを重視したかというと、何より人間は忘れやすい生き物だからだ。人間の記憶力というのはおおよそ当てにならない。一晩経つと、前の日にあった細かい出来事などはほとんど忘れてしまう。忘れるだけならまだしも、自分の都合のいいように記憶を捏造ねつぞうしてしまうこともある。

私の場合、キャッチャーとして一試合に何人ものバッターと対戦し、それが連日続くから、一年で蓄積する情報量は膨大なものになる。特定の一打席、一球について記憶し続けるなど不可能である。だから、その日のうちにメモをしておくことが重要だ。私は夜中でも、ふと目が覚めて当日のゲームについて気がついたことをメモすることがあったから、必ず枕元にノートと鉛筆を用意していた。

メモをすることの効用には、感性が高まることも含まれるだろう。一流選手であるほど、小さなことに気づく感性に優れている。逆にいうと、細かい感性に欠ける選手は絶対に一流にはなれない。

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野村克也

古田敦也、新庄剛志、宮本慎也、稲葉篤紀、田中将大——。球史に残る名選手を次々に育て上げた名将・野村克也。日本のプロ野球“最高の教師”が「教え方」の神髄を語る。プロ野球ファンはもちろん、スポーツインストラクター、学校の教師、会社のマネジ...もっと読む

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