ディズニーリゾート初の公式アプリの狙いとは?

連載1周年を迎える、「R30」こと川上慎市郎さんのマーケティング時評。今回取り上げるのは、東京ディズニーリゾートが30周年をきっかけに4月にリリースした初の公式アプリ「ハピネスカム」。「パーク内では人と人とのコミュニケーションを大切にしながら過ごしてもらいたい」という方針をとっていたTDRは、このアプリによって一体どんな体験をユーザーに提供するのでしょうか? そして、そこから見えてくるTDRの狙いとは。

夏が終わって急に風が涼しくなってきました。昨年9月からスタートしたこの連載コラムも、ちょうど1周年を迎えます。続けて読んでくださっている方にはお礼を申し上げたいと思います。

さて「周年」といえば、昨年から今年にかけては、東京ディズニーリゾート(TDR)開園30周年。昨年の9月のコラムでもそのCMを題材に取り上げましたが、ここのところ業績も絶好調のTDR、30周年をきっかけにさまざまな挑戦を仕掛けてきており、マーケティングの切り口からも目の離せない存在となっています。

今日はその取り組みの1つである、スマートフォンの活用について少しご紹介したいと思います。

TDRがスマホのアプリを作らなかった理由

意外に思われる方も多いかもしれませんが、TDRでモバイルの活用が本格的に始まったのは、それほど古いことではありません。2008年頃までは、公式のモバイルサイトにはアトラクションやチケットの料金など、必要最低限の情報しか載っていませんでした。

それまでのTDRは、インターネットという「バーチャルな情報空間」に対しては、活用するというよりもむしろ「ゲストとの心のこもったコミュニケーションのじゃまになる」という理由で敬遠していたようにさえ思います。2010年頃でもまだOLCのスタッフは「ゲストにはパーク内でなるべく携帯画面を見ずに、人と人とのコミュニケーションを大切にしながら過ごしてもらいたいと思っている」と話していました。

ですので、TDRの公式サイトがスマートフォンに対応し、アトラクションの待ち時間などが見られるようになったのも、2011年11月と、iPhoneが日本で発売されてから実に3年以上経ってからのことでした。米ディズニー・テーマパークでも、ちょうど同じ年に「ディズニー・モバイル・マジック」という公式アプリが登場していましたが、こちらもフロリダのディズニーパーク内のガイドマップやレストランの予約ができる程度のアプリで、「マジック」というほどのすごい機能があるわけではありませんでした。

TDRが米国では先行していた公式アプリすら出さなかったもう一つの理由は、ブランドアプリに付きものの「キャラクターグッズの販売や配布」といったキラーコンテンツが、日本の場合TDRの運営会社のオリエンタルランド(OLC)ではなく、米ディズニーの資本によるウォルト・ディズニー・ジャパン(WDJ)という別の会社の事業であったためでもあります。「パーク内はOLC、でもパーク以外の場所ではWDJ」という取り決めによって、仮にOLCがスマホのアプリを作っても、ディズニーのキャラクターライセンスが必要なグッズはほとんど盛り込めない可能性があったのです。

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R30::リローデッド

川上慎市郎

グロービス・マネジメント・スクールでマーケティングを教える川上慎市郎さんが、若手ビジネスパーソン向けに、マーケティング、メディア、そして教育について、深くやさしく解説をします。かつて有名ブログ「R30::マーケティング社会時評」を運営...もっと読む

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