▲(左)小野雅裕さん、(右)長尾彰さん
映画の中でしか知らないNASAのリアルとは?
長尾彰(以下:長尾) 今日はよろしくお願いします。NASAは僕の日常から離れすぎていて、違う世界の生き物と遭遇している気分です(笑)。
小野雅裕(以下:小野) いやいや、そんなことないですよ(笑)。
長尾 NASAで実際に働いてみて、驚くことは何ですか?
小野 そうですねぇ…。僕は、2013年からNASAで働いてますが、最近は驚いた記憶がありません。でも、入ったばかりの頃は、驚くことが多かったかもしれない。例えば、構内に野生の鹿が歩いていたり…。
長尾 鹿ですか(笑)。
小野 最初は写真を撮ったりして、騒いでましたけど、最近は見向きもしなくなりました(笑)。なぜかというと、毎日が必死だからです。プロジェクトを成功させるプレッシャーが強いし、予算を巡る競争は激しいし、常に安心を与えてくれないハードな環境なんですよ。日々がむしゃらに働いているので、驚く暇がないのかもしれません。
人集めも、チームづくりも日々悩むことばかり…。
長尾 NASAでの日々の仕事は「部」「課」といった部署ごとではなく、プロジェクトごとに行われるんですよね?
小野 そうです。それぞれのプロジェクトには決められた期間と予算があり、一人の職員はたいてい複数のプロジェクトに携わっています。そして、職員の給料は、費やした時間に応じて、プロジェクトの予算から支払われます。
長尾 小野さんもプロジェクトのリーダーを務めているんですよね。大体、何人くらいのメンバーがいるんですか?
小野 今の僕のチームは、全部で10人から15人くらい。いろんな国の人がいますよ。僕みたいな日本人もいれば、インド人もいますし、アメリカ人といえどバックボーンは全然違いますからね。
長尾 チームでプロジェクトを進めるのに苦労していることは何ですか?
小野 もう数え上げればきりがないですよ(笑)。例えば、自分のチームにスター選手みたいな人を入れたいじゃないですか。でも、彼らは引く手数多で、どこからでも声がかかります。僕なんか、NASAではまだ若手だし、獲得している予算額も少ないから、人の取り合いに勝つのが難しいんですよ。
長尾 人材獲得合戦なんですね。
小野 でも、仮にスター選手を獲得できたとしても、彼らに要求を強く突きつけると、「じゃあ、いいよ。違うプロジェクトでやるから」となってしまう。でも、好き勝手させていいわけでもないし…。こんな具合に、日々悩むことばかりです。
チームづくりは2人でリードすることから始めよう。
長尾 なるほど。メンバーのリクルーティングも大変だし、その後のメンバーをどうまとめるのかも大変なんですね。
小野 はい。でも、成果を出すにはいい人材が人用だし、チームで取り組まないと望んだ結果は手に入りません。何かいいアドバイスはありますか?
長尾 『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話』の本に書いたことなんですけど、2人でリードするといいかもしれません。
長尾 そもそも、リーダーひとりでチームをつくって、全員をまとめるって大変じゃないですか。だから、もうひとりの仲間を見つけて、2人でリードすることを「Co-Lead(コ・リード)」と言っています。
小野 つまり、相棒を見つけるということですね。
長尾 特に、小野さんと違うリーダーシップを発揮できる人と組むといいかもしれません。本では、リーダーシップのスタイルは4つに別れると書いているんですけど、小野さんは、どのスタイルだと思いますか?
小野 ……僕はこの中だったら「マエストロ型」かなぁ。
長尾 成果にこだわる職人肌ですね。結構ひとりで黙々とやるのが好きなタイプですか?
小野 はい。あと、僕は指示を出されるのが極端に嫌いなんですよ(笑)。何か課題を与えられて、それを自分の頭で考え、行動するのが好きなんです。
長尾 なるほど。そうすると、この対角線にいる「ティーチャー型」の人と組むといいかもしれない。小野さんが黙々と作業している間に、みんなの様子をうかがって、悩んでいるメンバーがいたら教えて回れる人です。
小野 あぁ…確かにそういう人がいると助かりそう(笑)。
遠くへ行きたいならみんなで行け。
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