優れた才能を活かせる社会に向かって
ディスレクシアの啓発、サポートに尽力されているNPOがあります。藤堂栄子さんという方が会長です。この方ご自身もディスレクシアなのですが、それは息子さんの高直さんがイギリス留学中に向こうでディスレクシアと診断を受けたことで、じつはお母さんもそうだったということがわかったのだそうです。
イギリスでは、ディスレクシアの子はすごい才能を持った存在として評価され、芸術系に進むケースが多いといいます。高直さんは空間認知能力が素晴らしく、建築系の大学に進み、在学中から才能を発揮して国際コンクールで賞を獲ったりしています。
卒業後、日本に戻ってきて建築デザイナーとして歩みはじめようとするのですが、そんな優秀な人でも、日本の社会ではすぐに個人として仕事ができるわけではない。会社に所属しないと、仕事が来ない。しかし、新人が会社に入ってすぐ仕事を任されるかというと、日本の会社はそういう構造になっていなくて、新人は事務仕事などをやらなければいけない。それは彼の得意とする仕事ではない、凹の部分です。自分の凸の部分を伸ばす教育を受けてきた彼の才能を、活かすことができない仕組みだったというのです。
いまは独立して建築デザイナーとして大活躍していますが、この話を聞いたとき、社会の仕組みの違いを深く考えさせられました。
日本の教育は、万遍なくできなければいけない。テストの点数を取らなければいけない。大学には一芸入試のようなシステムもあることはありますが、それが「偏った脳」を持った人たちが才能を活かすための道になっているかというと疑問が湧きます。
イギリスでは、ディスレクシアだとわかると、「おめでとう。だから、きみはそんなにステキなんだね」というような言葉をかけられるのだそうです。そういう理解のある環境の中だからこそ、のびのびと自分の持ち味を伸ばしていけるわけです。
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