夢は一人一つって誰が決めたんだろうね

病気を乗り越え、今春就職を迎えた今回の相談者。しかし夢を諦めきれないというのが今回の相談です。幡野広志さんは「夢」についてどう思っているのでしょうか。

※幡野広志さんへ相談を募集しています。専用フォーム(匿名可)からご応募ください。

幡野さん、はじめまして。
卒業間近の大学生です。
就職をしても夢を忘れないでいる為に、私の背中を支え続けてくれる言葉が欲しくてメッセージを送らせて頂きました。

中学生の時に外交官になりたいという夢を持ちました。母子家庭であり、困難な道ではありましたが、周囲の人々や財団の方々のお陰で、無事に大学へ進学し外交官への第一歩である海外留学を実現致しました。しかし、留学先で脳出血を患い、その後遺症で言語障害を持ちました。英語はおろか日本語すら不自由する状態になってしまったため、夢は諦めざるを得なくなりましたが、不幸中の幸いか、3年に渡るリハビリのおかげで失った言語の大部分を取り戻し、先の就職活動では一般枠で大企業の内定を頂きました。

実のところ、今の私が望む生き方は、企業への就職ではなく医学部を再受験してリハビリ医になることです。長いリハビリの末に辿り着いた第二の夢です。しかし、悩みに悩み、相談に相談を重ねた結果、無謀な挑戦を心配する母親や社会復帰の為の支援をしてくださった病院の先生方を説得する事が出来ず、就職活動を選び現在に至ります。

内定後も夢を諦められず、内定を辞退し受験勉強に専念したいと思いましたが、一度手に入れたものを手放す事ができるほど、私は強い人間ではありませんでした。最も、それができるならば就職活動はしていなかったはずですね。

働きながら勉強をし、お金を貯め、学力が伴ってきてから退職し挑戦するのが合理的な選択だと思っています。一方で、このような感情を持ちながら就職することに後ろめたさを感じます。内定を頂いた企業は、殆どの人が第一志望で入ってくる程人気な企業です。誰も私の心の内を知らないにしても、苦しい日々になると思います。このように、人の顔色を伺いがちで無難な道を選びがちな私は、一度就職してしまったら最後、夢があっても何かと理由をつけて現状維持を選んでしまいそうです。確かに、脳出血で死の縁を彷徨いました。手術前には死を覚悟しました。後遺症を抱えた時は人生に絶望しました。そこから戻ってきた私は、本来であれば、もう恐れるものはないはずです。でも、極限状態を経験して幸せの閾値が下がり過ぎると逆に困った現象が起こる事にも気付きました。今こうして言葉を紡げるだけで幸せを感じます。生きているだけでいいか、と思ってしまう時も多々あります。私は生きていればいいじゃないか党の立派な党員です。これは精神衛生上良いこともありますが、逆に向上心を邪魔します。現状でも十分恵まれているのだから欲を張るのはやめよう、そうして私が夢を諦めてしまうのが怖いです。それでも、助けて頂いたこの命、自分の納得のいく形で、人々を救う生き方がしたいです。遠くない将来、必ず、夢の為に先に進むべきか辞めておくべきかという悩みに直面すると思います。その時の私の背中を押してくれる言葉が、社会や仕事に揉まれても夢を忘れないでいる為の言葉が欲しいです。

まとまりのない文章になってしまい申し訳ありませんでした。読んで下さりありがとうございました。


(匿名希望 20代 男性)

就職おめでとうございます。どこの会社か気になるけど、とにかくあなた立派ですよ。

あなたとおなじようにリハビリで回復できた人からも、母子家庭でハンデを感じている人からも、不自由のない健常者にすらもあなたはすこし眩しく感じる存在だとおもいます。

ほかでもなくあなたの努力の賜物です。あなたの適切な努力と性格があってこそだよ。でもこういうことをいってしまうと、努力できない人もいるし、努力が実らない人だってたくさんいるし、環境に恵まれない人もいる社会なんです。

「運が良かっただけです」なんてことを謙虚にいう人もいるのだけど、こんどはその言葉で「じゃあ、あたしは運がないのか」と落ち込む人がいるんです。だからぼくはいつも「たまたまです」っていっています。これがいちばん波風が立たないよ。

あなたとおなじように、ぼくだって本音をいえばすこしは努力をしたし、周囲の人の助けもたくさんあったし、足の引っ張りも経験しています。死の縁をフラフラっと歩いているし、とてもいい医師と看護師さんに出会えたことは運が良かったのでしょう。いろいろ細かい要因はあるけど、おおきくみれば「たまたま」なんです。

だからあなたも「たまたまです」っていうといいかも。笑顔でいっちゃダメだよ、だからといって悲しい顔でもなくね。美味しさも不味さもわからないお酒とか、繊細すぎる出汁の味見をしたときの表情でいいましょう。

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幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。

幡野広志

写真家・幡野広志さんは、2017年に多発性骨髄腫という血液のガンを発症し、医師からあと3年の余命を宣告されました。その話を書いたブログは大きな反響を呼び、たくさんの応援の声が集まりました。想定外だったのは、なぜか一緒に人生相談もたくさ...もっと読む

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コメント

kachclt @SSen016 P.S. 今のSenSenさんの心に響く言葉が詰まっている気がするので、最近読んで感銘を受けた、幡野広志さんの記事URLを載せておきます📖🍰 ◆ 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

ukkaripi1 夢の、正体。 https://t.co/TwRa9jZBbm 2ヶ月前 replyretweetfavorite

emichan7878 https://t.co/lUZQ2kC612 2ヶ月前 replyretweetfavorite

fukutom https://t.co/HETaA0f4rG 2ヶ月前 replyretweetfavorite