やられっぱなしじゃダメ!#11

世界初の対話型レズ風俗「Relieve」のオーナー兼キャストとして活躍する橘みつさん。ホステスに向けられるセクハラに耐えられなくなったみつさんは退職を決意します。そこで同業のホステスに持ちかけられたのは〈労働争議〉でした。

清香さんは、呆然としているわたしを静かに諭す。「あのね、本当は人が人を採用するって、とっても重いことなの。病気になったから1週間後にはいさよなら、なんてできないのよ」「でも……」「ああ、いいわ。お金がないんでしょう。あたしがいい弁護士を紹介してあげる。さすがに無料ってわけには行かないけど、安くしてもらえるわ。賠償金のうちのちょっとは弁護費用に取られちゃうけど、でも手元にまとまった額は残るでしょう」清香さんはそのほっそりした手で、力強くわたしの肩を揺さぶった。「しっかりしなさい。やられっぱなしじゃダメ。自分の人生をふいにされることを、許してはいけない」清香さんの思わぬ剣幕に驚いて顔を見ていると、ふと視界がじんわりと滲んでくる。涙を落とす代わりに、わたしは何とかうなずいた。

結果的に、清香さんに紹介してもらった弁護士を仲裁人として、会社と労働争議を起こすこととなった。まさか弁護士を立てて来るとは会社側も思っていなかったのか、裁判を恐れて数ヶ月後にすぐに和解となった。その間、段取りは全て弁護士がつけてくれたので、わたしはただ事実を話すだけで済んだ。そして手元には百万円弱の賠償金が戻って来た。

全ての決着がついたあと、清香さんにすぐにお礼を言いにいった。この恩は絶対に一生忘れません、と清香さんに頭を下げると彼女はちょっと黙ったあと、体には気をつけなさいとだけ言った。そのあと、わたしはすぐにエスメラルダを辞めることになり、彼女とも連絡が取れなくなってしまった。それだけが今でも少し心残りだ。清香さんがどうして偶然職場が同じというだけのわたしに、ここまでしてくれたのかはわからない。でも、彼女の行為は確かにわたしの支えになっていた。前に進め、と言われたような気がして。

きらびやかな世界から降りたわたしは、いくつかのアルバイトを詰め込んで、毎月ギリギリの生活に舞い戻る。イベントスタッフ、デパートの販売員、ホテル従業員。今日生きるためだけに、働き続けた。毎日こんな風に、擦り切れて生きていくのもしょうがないことなのかもしれない。そんなわたしのところに、画面の向こう側から一つのヒントがもたらされた。

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レズ風俗で働くわたしが、他人の人生に本気でぶつかってきた話

橘みつ

世界初の対話型レズ風俗「Relieve」のオーナー兼キャストとして活躍する著者は、なぜ、レズ風俗で働くのでしょうか? お客さんの「人生のきっかけ」を共に探したいと願い、これまで200人以上に向き合ってきた彼女が、どんな人生をおくり、い...もっと読む

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コメント

gogatsubyyyo ワーーーーッ?!?!拙作&『さびしすぎて~』のお話が…!!!!!!!!!!  6ヶ月前 replyretweetfavorite

arisa_takao 『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』 の話が遂にキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! あれは何度読んでも泣いちゃう神作品… @mitsu_lesbian https://t.co/80F7salm2g 6ヶ月前 replyretweetfavorite