誰に」対する事業なのかを考える

ビジネスモデル2.0図鑑』著者の近藤哲朗さんと、図解総研所属の沖山誠さんに、ビジネスモデル図解の作りかたを教えていただくこの連載。第3回目は、ビジネスモデル図解の上段に位置する「利用者」についてどう考えればいいかを解説していきます。

1.「利用者」をどのように選ぶべきか?

前回は、ビジネスモデル図解のステップの全体像を見つつ、図解の中央段の「事業」に何を配置すればいいかをメインに説明してきた。第3回は、図解の上段の「利用者」について、どのように考えるべきか、どのように表現していくべきかを解説していく。

僕たちは、あえて「顧客」ではなく「利用者」という言葉を使っている。それには理由がある。なぜなら、事業やサービスで価値を提供される主体が、必ずしも対価を支払うわけではなく(受益者負担ではなく)、一般的に顧客と定義されない主体も利用者の段に入る可能性があるからだ。

そのため、より広い意味で「利用者」という言葉を用いている。必ずしも対価を払うわけではないが、事業やサービスを利用しているなら、それも主体の候補とすることが必要になるのだ。

そうした前提の上で、「利用者」という言葉で想像するのは、どのような主体だろう?

実は、サービスを利用する、といったときにも多様な関わり方がある。直接的であれ、間接的であれ、単に「利用している」という軸だけで利用者を選ぼうとすると、たくさん候補が出てきてしまい、混乱してしまうかもしれない。

そこで、利用者について以下のような定義で考えることを推奨する。

(1)サービスの価値を受けている
(2)サービスに対価を支払っている

それぞれ解説していく。

(1)サービスの価値を受けている

たとえば、図解する対象の事業がアプリを提供するものだった場合、それをインストールして利用する人が利用者として想定されるだろう。店舗を構える事業なら、その店舗に足を運ぶ人が利用者として選定される。

他にも、そのサービスを利用している人が、他の主体にビジネスを行う、というような形もあり得る。いわゆるB2B2C(※)などがこれに該当するが、そういう主体も利用者に含まれるだろう。

※B2B2C……B2B2CはBusiness to Business to Customerを略した単語。
B2C取引を仲介する事業などが該当する。

(2)サービスに対価を支払っている

ビジネスモデル図解は、その事業の経済合理性をシンプルに整理して表現するものである。そのため、価値を受けるという関係以外にも、それに対して対価を支払うということが説明されないといけない。

ただし、この場合の対価とは必ずしもお金とは限らない。たとえば利用者はお金を払わなかったとしても最終的にお金に換えられる何らかの対価を事業者側へ提供している場合もある。

たとえば、「Cansell」というサービスがある。行けなくなったホテルの予約を簡単に売ったり買ったりできるというものだ。通常、予約していたホテルをキャンセルすると、キャンセル代を支払う必要がある。しかし、このサービスを使うと、自分の宿泊予約の権利を売ることができるのだ。

利用者(予約を売りたい人)はCansellに対してお金を払うわけではない。それどころか逆に宿泊予約の権利を売ることによって、Cansellからお金を得ることができる。

ではCansellはどこからお金を得ているのか? というと、予約を買いたい人からだ。Cansellを通じてホテルの予約を購入しようとすると、通常価格より安くホテルの宿泊予約の権利を購入できる。Cansellは、その時の価格の15%を手数料として受け取る。

つまり、利用者はお金ではなく宿泊予約の権利をCansellに提供することで、Cansellの経済合理性を生み出す手助けをしているのだ。

上記の「(1)サービスの価値を受けている」「(2)サービスに対価を支払っている」の条件は、第2回の内容と照らして考えるとよりわかりやすい。第2回では、利用者にとっての経済合理性で考えると、利用者は何に価値を感じて対価を払っているのか? という点で考えよう、ということを述べた。

つまり、図解の上段の「利用者」に記載すべき主体は、(1)と(2)の両方を満たしているものほどふさわしい、ということになる。

2.「利用者」をどのように絞り込むべきか?

これまで、利用者の段に入れる主体をどのように考えるべきか? ということを説明してきた。

しかし、この次に問題になるのは、「とはいえ、上記の条件に照らしてみても、図解に入れたい主体がたくさんあって、選べない」ということだろう。ビジネスモデル図解では、3×3のルールを守ることでシンプルにコミュニケーションしやすくしているため、すべてのステークホルダー(利害関係者)を網羅的に入れることができないからだ。

とはいえ、すべての情報を載せようとすると、誰にも何も伝わらない複雑な図になってしまう。ここからは、そうしたジレンマを解消するための考え方を説明していこう。

利用者を絞り込むためには、以下の2つの観点で考えるとよい。

(1)その主体は対象のビジネスモデルが成立するために必要な主体か?
(2)その主体は、対象のビジネスモデルが経済合理性を成立させるために必要な主体か?

それぞれ解説していく。

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ビジネスの仕組みがわかる 図解のつくりかた

沖山誠 /近藤哲朗

100のビジネスモデルを3×3のフォーマットで図解し、7万部を超えるベストセラーとなった『ビジネスモデル2.0図鑑』。自社や取引先のビジネスモデルを自分で図解できるようになれば、課題を発見したり、新たなビジネスチャンスをつかみやすくな...もっと読む

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