凸凹をなくすのではなく、凸を伸ばそう
こんな子もいます。
HSCでディスレクシア(読み書き障がい)です。文字が頭に入りません。会話も苦手 です。でも、音声で耳から入るとわかるのです。そこで、図書館で視覚障がい者のための 録音図書のテープを借りてきて、耳で聴いてたくさん本を読んでいました。
自分のことを親に説明するために、絵と文章の小冊子にして渡したりしました。
専門学校に進むのですが、文字を読むことが苦手だということをいくら説明しても学校 側はディスレクシアや感覚過敏性を理解してくれず、「特別な措置はできません」の一点 張り。しばらくはがんばって行っていたのですが、続けられず、途中で学校をやめました。
感性が豊かで、絵を描くのが得意です。そこで障害年金を受給し、そのお金で通信教育 で絵の技術を学び、自分のアートの世界をつくり上げるようになりました。
いまでは家から離れ自立してやっていけるようになりました。もちろん、そこに至るまでの道筋は一筋縄ではいかなかったのですが、自分で世界を切り拓きたい一心でがんばり、 どんどんたくましく成長していきました。
しかし、こうやって自分の特性と向き合い、自分の得意なことを伸ばしていくことがで きる子は本当にわずかです。多くは、学校や社会の無理解の中で挫折し、たくさんの精神 症状をかかえてしまうのです。
そんな姿を見て、私もとてもつらく、歯がゆい思いを抱いています。
豊かな感受性を持つHSCには、芸術的なセンスを持つ人が多いのです。好きなことで 才能を開花させることができれば、それはたいへん幸せなことです。
その力を発揮するために、少し苦手なこともやらなくてはならないということになると、 人間けっこうがんばれるものです。同じことでも、イヤイヤながらやらされるのと、自発 的にやる気になるのとでは大違いです。
人は、好きなこと、得意なこと、楽しいことをやっているときは、脳の中でドーパミン が大量に出て前頭葉が活性化しているので、困難なことにも立ち向かえるのです。
できないことをできるようにすること、人間の成長のひとつのプロセスではあります。しかし、そのために無理をしすぎて心身のバランスを崩してしまうようではよくありませ ん。むしろ発想を変え、弱いところを無理やり引き上げようとするのではなく、強いとこ ろをもっと強くし、「強み」で勝負していくことも、生き方のひとつです。
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