締め切りギリギリならチームでトクする
トルコのことわざに、「明日できることは、今日やるな」というものがあります。
日本では一般的に、「今日できることは、今日のうちにやれ」「明日に先延ばしするな」と言われているのと比べると、正反対ですよね。
でも、仕事などで、締め切りギリギリに取り掛かったほうが効率よくできることって意外と多い気がするのです。
たとえば「今度の打ち合わせで、こういう資料が必要だ」と言われたものを、何人かで分担して作るとします。
最初に手をつけた人は、資料のフォーマットを一から考えたり、「これも必要だった!」という予定外の作業にいち早く気づいてしまったりして、結果的にたくさんの仕事を背負うということが起こりがちです。
一方、最後に手をつけた人は、他の人たちが試行錯誤して作り上げた成果物に便乗すればよくて、「みんなの資料を見ていたら、自分の担当分のこれはなくてもよさそうだ」とか言って、あわよくば仕事を減らせる可能性だってあるのです。
このように準備を後回しにすると、時間をかなり浮かせられることがあります。
それだけでなく、より多くの情報を考慮したうえで、より効率的に、よりよい仕上がりの作業ができるというメリットもあります。
締め切りにかなり余裕をもって取り掛かり、今ある情報だけで仕上げた後に、より有力な情報が入ってきたら、すべてやり直しになるわけですから。
仕事は「締め切りギリギリ」がいい
だから、たとえば自分の最大馬力で「1時間かかる仕事」を振られたら、「締め切りの1時間前」まで手をつけないほうがいいと思います。
もちろん、自分ひとりの力ではすまない場合は、先手を打っておく必要はあるでしょう。たとえば誰かから資料や情報を得る必要があったりしたら、その依頼メールだけ先に出しておけばいいのです。
こうして不確定要素だけを前もって潰し、「あとは自分の作業だけ」という状態にしておいて、完了できるギリギリに最大馬力でやってしまう。「極限まで手をつけない」という習慣を持つと、こういった優先順位をつける力や計画性も身につきます。
本当は1時間で終わるはずの仕事でも、締め切りのずっと前に始めると、ダラダラと3日くらいかけてしまったりします。
締め切りに合わせて作業をするのが人間の性分だし、余裕があることで、かえってやる気の浮き沈みが生じるからです。仕事の質を大して左右しないことに「ああでもない」「こうでもない」と悩んでみたり、やたらと休憩を挟んでみたりとかは、やりがちじゃないでしょうか。
本当は時速100キロで走れるのに、時速20キロくらいでとろとろ走るような感じです。1時間前に着手して最大馬力で完成させれば、そんなムダな時間が丸ごと浮くわけです。
「締め切りを破ったら……」と思うと怖いかもしれませんが、締め切りギリギリのタイミングになると、「やる気がないから、やらない」という選択肢はありません。
最大馬力を出せば1時間でできるポテンシャルのある人なら、「あと1時間しかない!」となったときには、奮起してどうにかするものなのです。
1回はコケて自分の「最大馬力」を知っておく
ただ、締め切りどおりに仕上げるには、自分の最大馬力がどれくらいかを、作業の種類ごとに把握しておく必要はあるでしょう。
失敗の記憶は色濃く残るものです。
だから、自分の能力値と予測の精度を上げるには、「この手のことは1時間でできる」と見込んでいたところ3時間かかってしまって怒られた、といった失敗の経験も大事だと思います。
バイクでスピードを出したまま曲がるときって、ものすごく車体を傾けて走りますよね。あそこで最大スピードを出せる人は「車体を傾けすぎてコケた経験」をしたことで、転ばないギリギリの傾きを体得した人です。それと同じ話なのです。
そんなギリギリの思いをするくらいなら、時間的に余裕がある中でも、最大馬力を出せたほうがいいじゃないかと思ったかもしれません。
理論的には、それは可能でしょう。
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