ビジネスモデル図解、基本の「き」

100のビジネスモデルを3×3のフォーマットで図解し、7万部を超えるベストセラーとなった『ビジネスモデル2.0図鑑』。自社や取引先のビジネスモデルを自分で図解できるようになれば、課題を発見したり、新たなビジネスチャンスをつかみやすくなります。この連載では、『ビジネスモデル2.0図鑑』著者の近藤哲朗さんと、図解総研所属の沖山誠さんが、どんなステップで図解をつくればいいか、何に気をつければいいかなどについて、具体的な事例を交えて教えます。全8回にわたってお届けしていきます。

はじめに

僕たちが『ビジネスモデル2.0図鑑』を出版したのは2018年9月のことです。
「Amazon Go」や「Spotify」など、100の事例のビジネスモデルを同じフォーマットで図解した本は、7万部を超えるベストセラーになりました。
その後さまざまな反響を得て、企業から多数の講演・ワークショップの依頼をいただきました。「ビジネスモデルを自分で図解できるようになりたい」という要望もたくさん寄せられました。

ビジネスモデルが図解できるようになると、どんな職業の人も実務に役立てることができます。自社サービスを図解することで会社の強みや弱みがわかり、新たな課題やビジネスチャンスを見つけやすくなりますし、取引先に自社サービスの図解をすることで契約がスムーズにいくこともあるかもしれません。学生であれば、自分が就職したい業界・企業への理解が進むでしょう。

また、投資をおこなう人にとっては、投資の判断材料のひとつにもなります。気になっている会社の事業を図解してみることで、その会社に将来性があるかどうかなどが見極められるようになるかもしれません。

そのようなわけで、僕たちは『ビジネスモデル2.0図鑑』を一緒に作った「ビジネス図解研究所」のメンバーと一緒に、ビジネスモデルを図解するワークショップを行ってきました。ところが、参加者のなかには図解に苦戦している人も少なからずいました。回を重ねていくにつれ、初心者が迷うポイントや立ち止まる点に共通項が見えてきました。

そこで生まれたのがこの連載です。この連載では、実際にビジネスモデルを図解するにあたり、具体的にどんなステップでかけばいいか、何に気をつけてかけばいいか、といったノウハウを徹底的にお伝えしていきます。

『ビジネスモデル2.0図鑑』を読んだ方が「よし、実際に自分も図解してみよう」と思ったときに、手にとっていただけたらと思いますが、その逆もありです。『ビジネスモデル2.0図鑑』を知らずにこの連載を読み、ほかの事例を知りたいと思った方は、ぜひ『ビジネスモデル2.0図鑑』を読んでみてください。

僕たちは、ビジネスモデルという一見複雑な概念を、より伝わりやすく、コミュニケーションしやすくするために、3×3のマス目で図解するといったビジネスモデル図解のルールを考案しました。この連載によってますますビジネスモデルという情報単位が流通しやすくなり、それによって、面白いビジネスモデルが生まれやすい環境づくりの一端を担えればうれしいです。

1.改めて、ビジネスモデル図解とは何か?

ビジネスモデル図解が何か、改めてその定義を確認しよう。 ビジネスモデル図解とは、「そのビジネスは誰(何)が関係してるの? どんな関係なの? を知るためのツール」である。

そして、ビジネスモデル図解は、よりシンプルでわかりやすく相手にそのビジネスについての情報を伝えるために、いくつかのルールがある。

(1)主体を3×3で構成する
(2)モノ・カネ・情報の流れを矢印で説明する
(3)上記で説明しきれない部分を、ふきだしの補足で説明する

それぞれ一つずつ説明しよう。

(1)主体を3×3で構成する

「主体」とは、ビジネスにおける重要な関係者・モノのことを指す。
ビジネスモデル図解においては、この主体を3段×3列、つまり、3×3のマス目に収めるというルールがある。

なぜこの3段構成なのかというと、ビジネスにおいて、利用者、事業、事業者というのはぜったい存在する普遍的な構造だからだ。
ビジネスモデル図解では、上段、中段、下段をそれぞれ、利用者、事業、事業者を指すものとしてルールを定めている。

たとえば「俺のフレンチ」。これは、「俺のフレンチ」という事業を、俺の株式会社という事業者が運営し、利用者に提供している。

このように、3段それぞれについて意味を持たせ、その位置に何が来るのか? をルールに沿って考えて配置する必要がある。

(2)モノ・カネ・情報の流れを矢印で説明する

「矢印」は、主体の間を流れる重要な関係性のことを表す。
「矢印」には、モノ・カネ・情報の流れを区別するためマークがある。

入れ子の場合は小さいほうに●がつく。
また、場合によっては点線を用いることもあるが、それは必ず存在するわけではない流れの場合に用いる。

(3)上記で説明しきれない部分を、ふきだしの補足で説明する

「補足」とは、主体や矢印だけでは描ききれない重要な情報のことを指す。
なぜこの主体があるのか? なぜこの矢印があるのか? など、理由を明記するときにも使う。
補足に対して補足が入る、ということもある。

こうしたビジネスモデル図解のルールは、次のような強みを発揮する。

①アイコンや矢印によって何が重要なのか表現・理解しやすい
②3×3という制約を設けることで同じ形式で比較できる

順に説明していこう。

①アイコンや矢印によって何が重要なのか表現・理解しやすい

上記の3つのルールに基づいて、僕たちがツールキットで配布しているアイコンをあてはめることで、図解を完成させていく。

たとえば、「俺のフレンチ」を見ると、その事業に重要な一流シェフと、立ち食いテーブルを左右に置いていることで、視覚的に、その重要な主体をイメージさせることができる。

他の分析ツールでは、文字を主として活用することが多い。文字ベースで情報を整理することは網羅的に情報を掲載できるというメリットをもつ。その一方で、そこから情報を読み解き、重要なメッセージを抽出するのに時間を要するというデメリットがある。

その点、このビジネスモデル図解では、シンプルな構成とアイコンによって、その事業を特徴づける主体が何か、を理解することができる点が強みだ。

②3×3という制約を設けることで同じ形式で比較できる

ビジネスモデル図解は、どの図解も3×3のルールに従って作成されている。
そのため、そのフォーマットに従って比較しやすく、その事業で何が違うのか、という点を考えやすいというメリットがある。

ここまで説明してきたルールを守れば、最低限の図解は作成できるだろう。しかし、ビジネスモデル図解は、このルール以外にも意識しなければならない点がいくつかある。

それについて、順に説明していこう。

2.ビジネスモデル図解における注意

(1)ビジネスモデル図解は目的が大事

ビジネスモデル図解は、あくまでもコミュニケーションツールだということを意識することが大事だ。
つまり、その図解を、誰に、なんのために伝えるか? が重要だということである。

たとえば、自分が新しく事業を立ち上げ、ビジネスモデル図解を用いて、投資家に対して、投資を促すような図解を作成しようと考えたとしよう。
その場合、ビジネスモデル図解を作成するときに、その図解で表現するべきことは、「いかにその事業が経済合理的で、成長可能性があるか?」ということだろう。

また、自分が営業で、取引先に対して自社と契約を結んでほしいときに、ビジネスモデル図解を用いようと考えたとしよう。
その場合、ビジネスモデル図解を作成するときに表現するべきことは、「いかにその事業が双方にとって経済的なメリットがあるか?」ということ。

このように、ビジネスモデル図解を作る、というためには、その目的を明確に意識する必要がある。

(2)ビジネスモデル図解に正解はない

ビジネスモデル図解には、唯一正しい図解というのは存在しない。
どういうことかというと、ビジネスモデル図解の前提条件と大きく関係する。ビジネスモデル図解の前提条件とは、以下のようなものだ。

①時間軸を表現しない
②複数の事業を表現しない
③網羅性よりもメッセージ性を大事にする

それぞれ順に説明しよう。

①時間軸を表現しない

ビジネスモデル図解は、その時点のスナップショットを表現するもの。そのため、ビジネスモデルが形成された経緯や歴史など、時間軸を伴う表現はできない。

②複数の事業を表現しない

ビジネスモデル図解の3×3のフォーマットという制約上、載せられる情報はどうしても限られる。会社のすべての事業を表現しようとしたり、それらの関係性を表現しようとするために使用するのは非常に難しい。

そのため、ビジネスモデル図解をする対象は単体の事業のみになる。

③網羅性よりもメッセージ性を大事にする

ビジネスモデル図解の3×3のフォーマットがある以上、その事業に関するすべての情報を図解で表現することは難しい。つまり、その制約の中で、なんの情報を載せるべきか、ということを考える必要がある。

そのため、メッセージを伝えるために必要なことを考え、情報に優先度をつけて整理をし、重要なことだけに絞り込む必要がある。

まとめると、ビジネスモデル図解は、すべての情報を網羅的に正しく載せることはできないという前提があるため、それぞれの目的や、何が重要かと考える人の観点によって、それぞれの図解が完成する、ということだ。

つまり、作る人によって、その事業の捉え方や、誰になんのために伝えるかというメッセージが異なるため、図解の形は違うものになる。

そのため、ビジネスモデル図解では、正しい図解を作成することがゴールではないことを認識する必要がある。あくまでも、「目的に照らして、相手に自分が伝えたかった情報が、その図解から伝わるか?」を考えることが大事なのだ。

今回は、ビジネスモデル図解を作成するにあたっての、大前提となるルールや注意点について解説してきた。

次回からは、今回の内容を踏まえ、実際にビジネスモデル図解を作成するにあたって、どのように作成していくべきか、その考え方やコツをお伝えできればと思う。

<第1回のまとめ>
・ビジネスモデル図解は、主体、矢印、補足によって構成されていて、3×3のマス目に必要な主体を収めるというルールがある

・ビジネスモデル図解はコミュニケーションツールなので、誰に何を伝えるのか、という目的を意識して考えるのが大事

・ビジネスモデル図解の強みは、重要な点を表現しやすく、かつ同じフォーマットなので比較がしやすいところ

・ビジネスモデル図解の対象は単一事業に限られ、かつ伝えられる情報に限界があるので、情報の正確性よりも、相手に伝えたい情報が伝わるかということを意識することが大事


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この連載について

ビジネスの仕組みがわかる 図解のつくりかた

沖山誠 /近藤哲朗

100のビジネスモデルを3×3のフォーマットで図解し、7万部を超えるベストセラーとなった『ビジネスモデル2.0図鑑』。自社や取引先のビジネスモデルを自分で図解できるようになれば、課題を発見したり、新たなビジネスチャンスをつかみやすくな...もっと読む

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コメント

yoshinon これは、かなり分かりやすい上に使いやすい。 7ヶ月前 replyretweetfavorite

runnernobu 今までのモデルががらっと変わるのか、変えていくところは何か、新しい何かを考えるにしても1つの解りやすい思考の整理方法を身に付けているとやりやすいですよね。 今、こういうのに触れる、学ぶ、取り掛かると良いかも? https://t.co/SNkDfPKvhe 7ヶ月前 replyretweetfavorite

juni_ca_wa_ii 面白いねー。マナー研修等の外部研修… https://t.co/8Ce1Wmk4Aj 7ヶ月前 replyretweetfavorite

contractio 図解と聞いて / 1件のコメント https://t.co/5goYUPC9jV #図解 7ヶ月前 replyretweetfavorite