ダンスにもそういう呼び方があるんだね!チェイサー……

「タカラヅカ」を支えているのはトップスターだけじゃない!100年以上の歴史を持ち、未婚女性たちが「清く、正しく、美しく」をモットーに歌い踊る宝塚歌劇団。その美しさでファンを魅了するスターの隣には、モヒカンの悪役や貫禄のあるおじさん役を全力で演じきる名バイプレイヤー・天真みちること「たそ」の姿があった……。元SMAP中居正広に「友達になれそう」と、元花組トップスター明日海りおには「宝塚に新ジャンルを築いた」と言わしめた伝説の元タカラジェンヌによる、誰も知らない爆笑宝塚エッセイ。

どうも。
日々さまざまな情報が錯綜していますね。

兎にも角にも今自分にできることは感染者を増やさないことなので、「不要不急」の外出を自粛している中、自宅で「ビデオ会議」することが多くなってきて、カメラ越しに映る背景を「いかにリア充なビデオ会議映えする部屋」にするかにこだわっています。

そのおかげといっては何ですが、めっちゃ部屋が片付きました。こんな形で私生活に影響が出るとは……。

また、自身のディナーショーが延期になってしまったことで、自分を見つめなおす時間が生まれ、「お主、こんなプロポーションで人様の前に立とうとしてたんか!!!」と自分に腹が立ち、最近疎かになりつつあったトレーニングを再開しました。

幸い(?)在団中から「今日こそ俺は!」とちょいちょい買い足していったトレーニング用品もあり、キレイになった部屋でお気に入りのラジオ番組を聞きつつ、パーソナリティに話しかけながら(もちろん一人で)鍛えています。

感染症危険レベルが下がり、再び心身共に健康に明るく皆様とお会いできるその日に向けて、黙々とアグレッシブに引き籠って行こうと思います。

そんなこんなで前回、特別編をお届けしましたが、通常運転に戻り初舞台編後半です。

お待たせしましたゴー♪


ダンスにもそういう呼び方があるんだね!チェイサー……

※前半は11話参照

朝から晩までひたすらに稽古を重ね、「曲が聞こえたら頭で考えなくても身体が勝手に動く」レベルまで到達したころ、新たな振付が加わった。

俗に「チェイサー」と呼ばれるそれは、ラインダンスが終わった後、再び曲のサビ的な部分(一番盛り上がっている部分)に合わせて初舞台生が「前ならえ」をして互いの肩に手を乗せ、電車のように一列に連結して腿上げをしながら舞台の花道に捌(は)けていく動きのこと。

普段のショーでは、次のダンスナンバーの前奏に合わせて捌けたり、最後のポーズ決まりで舞台照明が暗転し、後奏が流れている中に捌けたりと、 あまり「捌ける」ことにスポットは当てられないのだが、この時だけは、捌けることもひとつのダンスナンバーとして、より初舞台生の存在を印象的にする。

ただし! 2分30秒間に41回足上げをした直後、腿上げをしながら捌けていくというのは、中々に体力勝負である。

しかも、「前ならえ」状態なので、ダダーっと全員が一気に捌けられるわけではなく、ベルトコンベア式に1人ずつ袖中に消えていくように捌けることになる。

つまり、その時の並び順ですぐに捌けられる子もいれば、最後まで舞台上で腿上げしながら待ち続ける子も生まれる、ということだ。

私たち92期のラインダンスは最後の足上げの時のフォーメーションパターンが「中高(なかだか)」(身長の高い子が舞台のセンターに立ち、低くなるにつれて端になるように並ぶこと)だったので、娘役の子が先頭と最後尾になった。

先頭はその後に続く全員の舵取りをすることになるので、同期の中でもかなりしっかりしている元宙組の百千糸(ももち・いと)が、そして最後尾は、根性があり、きちんと最後まで腿上げができる、と振付の先生に認められている元雪組の花城舞(はなしろ・まい)がそれぞれ選ばれた。

先生に2人が選ばれた時、名誉ある任務に同期みんなで「凄いね」「格好良いね」と拍手し、私もその2人を心から尊敬していたし、なんなら羨ましいな、私も任命されたいな、とすら思っていた。

だが……

いざチェイサーをやってみたら、あまりのしんどさに「心臓が耳の真横にあるのかな?」と思うくらい凄まじい音でドックンドックンと動悸が止まらず、朦朧とした思考回路の隅っこで「きゅ—しんきゅーしん♪」と某生薬強心剤のCMのメロディが流れてくる始末。

ついさっきまでの「私も任命されたいな(羨望)」という気持ちはどこへやら。

すぐだ!すぐにもだ!私を袖中に迎え入れるのだ……!!と言わんばかりに 少しも早く捌けられることを願い腿上げをするのだった。

(余談だが、この日の経験から、その後バーなどで「チェイサーいりますか?」と聞かれると反射的に「いいえ、結構です」と応えてしまう症状に苛まれるようになった)

どんな振付も、大人数で踊る際は全員の意識をひとつにしないと「統一美」は得られない。

ことに初舞台は、まだひとりひとりの知名度が0に近いので「92期生」として魅せる団体競技に近い。

私たちは全員の足の上げる高さ、速度など、ひとつひとつ話し合いながら自主稽古を重ねた。


ある日のこと、

公演の稽古は普段は稽古場で本番を想定して行っているのだが、稽古期間中に何回か実際に舞台上で行う「舞台使用」があり、私たちは初めて舞台上で踊ることになった。

元々大好きで観劇していた世界であり、一度見学はしていたものの、初めて舞台上で踊ってみると……まっさきに思ったのは「どこがどこだかわからない」だった。

稽古場は目線の先に鏡があり、そこに映る自分の姿を見ながら角度をそろえたり、目印を決めていたのだが、舞台に行くと目線の先に広がる無数の客席、ハレーションを起こしたのかと思うほど明るいライトに照らされ、ムスカ現象に陥り軽くパニック。

そんな中、舞台機構の「銀橋(ぎんきょう)」(オーケストラと客席の間にある通路のような舞台)をチェイサーで渡った時…… そのあまりの狭さに度肝を抜かれた。

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こう見えて元タカラジェンヌです

天真みちる

「タカラヅカ」を支えているのはトップスターだけじゃない!100年以上の歴史を持ち、未婚女性たちが「清く、正しく、美しく」をモットーに歌い踊る宝塚歌劇団。その美しさでファンを魅了するスターの隣には、モヒカンの悪役や貫禄のあるおじさん役を...もっと読む

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コメント

one_one_1_1 たその連載の最新話が更新されてた。今回も、公共の場で読んじゃいけない。笑いが止まらなくなるから🤣 6ヶ月前 replyretweetfavorite

allred_risa たそ(天真みちる)連載更新されてたけど、ちょうど初舞台の話だったこともあり、106期生が無事に初舞台を踏めるといいなと祈るしかないが、どうもそんな情勢じゃないのが本当にいたたまれぬ…。 https://t.co/Zzzrb8FQBI 6ヶ月前 replyretweetfavorite

kurageimus 寺田心くんのくだりが想像できるところが最高。からのオチ😂 https://t.co/eE8jEdmyek 6ヶ月前 replyretweetfavorite