第5回】人気が高まってきた濁り湯

日本には凄い温泉がいっぱいある!! 秋の行楽シーズン前にぜひ知っておいてほしい、日本の隠れた名湯を、TVチャンピオン全国温泉通選手権にて3連覇を達成した郡司勇さんが著したロングセラー『秘湯、珍湯、怪湯を行く!――温泉チャンピオン6000湯の軌跡』(角川oneテーマ21)より抜粋して紹介いたします。最終回となる第5回は東京近郊の濁り湯をご案内します。 ※本文中の成分総計は1リットルあたりの含有量、単位はミリグラム。また透明度はセンチで記述。各成分量も一リットルあたりの量。

東京都・松の湯

 最近は濁り湯の人気があり、雑誌の特集で濁り湯の監修や解説をすることが多くなった。全国には数多くの色つき温泉がある。一般的には白濁や赤褐色であるが、珍しいものは青や緑色もある。また真っ黒な墨色、灰白濁した湯、琥珀色や紅茶色などもある。
 これらは泉質により分類できる。硫黄泉の硫化水素型の温泉は白濁することが多く、特有の硫黄臭とともに存在感抜群である。硫黄泉の硫黄型は緑色透明になり、市販の入浴剤を入れたように綺麗だ。モール(亜炭・腐植質)を含む温泉はモールの量によって変化する。薄いと琥珀色でだんだんと赤褐色(紅茶色)になり、コーヒー色から墨汁のような濃さまである。
 鉄分を含む鉄鉱泉は赤い湯になる。この鉄分の分量によってバリエーションが起こる。少量の鉄分だとわずかに緑がかった色になり、やや濃い目だと黄褐色、もっとも濃くなると赤い湯になる。青くなる湯はメタ珪酸が多く含有された温泉に起きる現象で、全国でも珍しいものだ。鉄分を含む硫黄泉は硫化鉄が生成され薄墨色から灰白濁、グレー色になる。これは一部の温泉にのみ見られる珍湯である。

関東の濁り湯

 関東では栃木県の塩原元湯にある、大出館の有名な「墨湯」は珍湯である。鉄分が多いのであろう、硫化鉄が沈殿して泥湯の一歩手前の濃厚な浴感がある。まさに墨汁だ。先述の舟唄温泉を濃くした感じである。また、奥塩原新湯温泉は酸性硫黄泉の白濁した湯で三つの共同湯があるが、足元湧出源泉の「むじなの湯」が絶品である。浴槽の壁に露出した岩の間より温泉が湧出し、一部洞窟状に穿たれている。酸味の効いた温泉である。

 群馬県では褐色の名湯、伊香保温泉では老舗の「千明仁泉亭」が、深くかつ大きい内湯に源泉が多量に掛け流され良い温泉宿である。伊香保は大きな温泉地で、急傾斜に位置している。石段の両側に宿が建ち並び、その光景は傾斜地に立つ温泉地の代名詞となっているほどだ。泉質は塩や重曹もふくむ硫酸塩泉。特に鉄分が8.3ミリグラム含有され、赤い湯が特徴となっている。源泉は40.9度のもので、毎分3300リットルが石段の中央に流れているのが見える。昔からの木の札で仕切り、各温泉宿に分配しているのがわかった。
 この千明仁泉亭は木造三階建てで、内湯のうち滝の湯はレトロな意匠で気に入った。打たせ湯と源泉湧出口があり、掛け流しにされている。また大浴場が凄い。立つと胸の下までくる、深さ1メートルの大きな浴槽である。湯の容積たるや大量なもので、圧倒的な湯量を感じる。斜面なので景観の良い露天風呂もある。
 薄褐色、渋味、少金気臭+薬臭。内湯、露天風呂ともに色は薄いが新鮮な証拠であろう。温泉は共同源泉の食塩重炭酸土類石膏泉(Ca・Na-SO4・HCO3・Cl泉)である。総計はやっと単純泉を上まったばかりの1280ミリグラムである。伊香保温泉はこの総量から考えると、驚くべき存在感である。純な石膏泉ではなく、多彩な含有物で豊かな表情の湯であった。

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秘湯、珍湯、怪湯を行く!

郡司勇

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kadokawaone21 cakes更新!温泉チャンピオンによる全国の秘湯案内、最終回の今回は関東圏の濁り湯をご紹介します!→ 5年弱前 replyretweetfavorite