30代になっても出会いはたっぷりある
恋愛体質だとかラブアディクトだとかいう性質は、どうやら一生治らないビョーキのようなものらしい。私の高校時代の友人で自らを恋愛中毒だと言っていた女の子は、愛している人と大恋愛の末に結婚し、玉のように可愛い子供を二人授かってなお、年に2回くらいは新たな恋に落ちないと死んでしまうらしく、ちょいちょい合コンを開いてくれ、と連絡をよこす。
キャバクラなども含めて既婚者の男がさんざん女の子を口説く現場を見てきた私としては、たとえ既婚であっても恋愛中毒の女の子の恋に加担したところでそれほど罪悪感はないが、旦那が知り合いだったりするとちょっといたたまれない。あんなに、好き好き愛してる、なんて言って結婚しても、今となっては「旦那のことは好きだけど、キュンキュンはしないの」なんて言ってるわけだし。
ただ、そんな恋愛体質な女の子であっても、一応結婚しているということは、恋愛のキュンキュンよりも大切なパートナーシップについて何か思うことはあったのだろうし、使い捨てのキュンキュンメンズたちより何かしらの情を旦那様については感じているのだろう、とは思う。そう考えると、そんな男性と巡り会えたなんて素晴らしいことのような気もする。
もちろん、そうやってキュンキュン体質を維持しつつ別のベクトルでもパートナーを選べて、彼との人生を切り開けるような人ばかりではない。むしろ、愚直にその体質を受け入れている場合、燃え尽きるであろう恋愛感情のままに結婚する、なんていうことは年々しにくくなる。20代前半のうちならまだしも、30代にもなれば、自分のキュンキュンが2〜3年もすれば燃え尽きてしまうことをすでにこれでもかというほど学びすぎており、どうせ3年後には消えてしまうような心の盛り上がりを頼りに一生の伴侶など決めてしまっていいのか、と尻込みするのはある意味当然だ。
なんというか、付き合うと5年くらいはもつ、というような人の方が偉いわけでもないし、恋愛感情なんて自分の努力で維持できるものではないから、冷めてしまうのはしょうがない。ただ、シャンパンの泡のような楽しい恋愛を繰り返しているうちに、年老いてしまう、というのは人間の大変残酷な真実ではある。
都内の私立高校を卒業した後、保育科のある女子大に進学した彼女は、誰が見ても美人、というほどではないにせよ、学年の、それなりに目立つ集団の中にいて見劣りしない程度には顔もスタイルも問題なく恵まれていた。世代の関係で、今から振り返ればそれなりにギャル系ではあったものの、それほどけばけばしくも黒くもなく、むしろギャルグループの中ではかなり抑えのきいたファッションで、高校時代も大学時代も、かなり潤沢な選択肢がある中で彼氏を作っていた。
高校時代は別としても、女子大の友人らが商社マンや業界人に色めきたつなかで、彼女は同じ学生や、偶然出会ったスポーツ紙の記者など、特に肩書きを気にすることなく人を好きになるようなところがあり、ある意味で全く打算のない恋愛をしていた印象がある。近年でいうところのインスタ女子やインフルエンサーのような、流行に敏感でおしゃれに貪欲で女子力が高い彼女の見た目から考えると、それはやはりそこそこ意外な一面だった。
大学卒業と同時に就職したのは、生理周期管理のアプリなどが有名な企業だったが、3年たたないうちに転職し、さらに大手のネット系企業で広報のポジションに落ち着いた。そこでも同僚は彼女と同じように女子力が高く、総じて顔面偏差値も高く、合コンを含む男性との出会いには困ったことがないようだった。
「彼氏がいる時は、私は一途にガーってなるタイプだから、合コンとか、よっぽど友達が人数集めに困ってたり、どうしても会っておきたい人がいたりしない限り行かないし、付き合ってる時は別に、この人よりいい人いるかも、とかも思わないタイプなんだよね。でも、学生の最後に付き合ってた同い年の人と別れて、そのあとに付き合った車のディーラー勤めの人と別れて、そのあと2年くらい彼氏いない時期があったからその間は、ちょこちょこ合コン行ったり、ちょっといい感じの人と遊んだり。結構ふらふら」