生産性よりもまずは命!」コロナと相模原のこと。

新型肺炎の感染拡大のために、テレワークや時差出勤が導入され、イベントや店舗の自粛や休業が続いています。「自粛疲れ」なる言葉も出てきました。
そんななか、先週3月16日に、相模原障害者施設殺傷事件の結審がありました。
つい先週のニュースですが、すでにコロナにかき消されてしまった感は否めません。
今こそ考えたい、「生産性」のお話です。

今、コロナウィルスの感染回避のため、テレワークや時差出勤する会社もあると知る。が、「娘がテレワークになったけど、席を3分離れると離席マークがつく。9時から5時まで見張られている感じに耐えられへんって言うて結局3日目には出勤したわ」「時差出勤で遅めに出勤すると、その日の会社の空気みたいなものが出来上がってて、会議での発言がスル―されたりとか……気のせいかな。遅く来たんなら、人よりガンバレみたいな感じがする」

ふぬー。テレワークは監禁じゃない。時差出勤は遅刻じゃない。これでは、通勤リスクが回避されても、そのぶん、命懸けで働けよと暗黙で言われているようなもんだ。せっかく良い制度があっても、それを使う者を信じて、託して頂けないんだ。やもすると、はじめてそれを使う人がやり玉に挙げられかねないのかな。お前だけずるいって……。健常者の世界も障害者とおんなじなのかな。大変だ!

自分が働いていたころを振り返る。会社にいけば仕事はあった。たまのお暇な時も会社に行けばお給料はいただけた。自分なりに元気だった時にはありがたい場所だった。だから、しがみつけるものならしがみつきたかった。

大雨や全身が凍りつくような寒さの日も、支えてくれる人と一緒に出勤した。「車いすに座ってるだけやん」って? これがなかなかつらいんですよ。歩いてれば体がぬくもる。だけど、痛む腰や首の身を車いすの上に長らえると筋肉は硬縮し冷たくなるの。

「死体ちゃうよ。痛いんだから生身」とジョークと笑顔も年々薄くなっていった。職場に行かずともできる仕事はある。職場に行くだけが仕事じゃないのに……でも、それを仕事とは認めてはくれない場所だった。

入職当初は、こっそり家で報告書を書くことも楽しいと思えた。でも、私はある日を境に職場の仕事を家に持ちこまないと決めた。ボランティアで仕事をするのは、自分の充実感は得られ、身を守ることにもつながるかもしれないが、それはご同僚にしたら? と思ったからだ。

逆に行きさえすれば、背中に激痛が走る時など、ベッドで横になりながらの会議参加も許してくれた。私にとって職場はとっても有り難いんだけど、合理性も統合性も欠く不思議な場所だった。

それにしても、なぜあの場所を去ったんだろう? 「職場に行きたくないなー」と思ったのは、北摂大地震直後だったような。

被災した障害者を支援する団体職員は、そんな時休めるはずはない。休んでいいような気もしたけれど、休んだ後どんな顔で出勤したらいいかわからず出勤した。「年老いた両親も体調がよくないし、余震も怖いからしばらく休みたいです」なんてさすがに言えなかった。みんなそうだからだ。顔つきが変わるくらいの忙しさの中、懸命に仕事をする職員たち。もちろん私も目の前で積まれていく仕事をこなした。でも、職場までは電車通勤で自宅から45分かかる。もし、余震で電車が動かず帰宅難民になったら……それにここは古いマンションの一階。一人の時にもしつぶれたら……私大丈夫か? 心に沸いた不安は消えなかった。この時は無事だったけど、仮にここが被災していたら何ができるん? 働き方はその先々に対応できるものにしておかないとあかんやん。命をかけなくても仕事ができる環境にしとかなあかんやんと思った。

息子のことを経済的には気にしなくていい状況になった去年、こちらにお世話になるのはここまでと決めた。退職の日「福本さん本当に明日から来なくなるんだ。福本さん仕事も少なってきたからっていうけど、それっ知らん間に仕事がこなせるようになったということやん。いやーそんなことより、ただなんか寂しくなるなーって思って」と一人の同僚から言われた。ただ寂しい、か……。

実は「私が一番生産性という言葉に囚われていたのかもしれない」とふと思った。

3月16日。「生産性」がない障害者は生きるに値しないと19人の人間(障害者)を殺した植松被告(相模原事件)の判決が降りた。そのニュースは、コロナウィルスに見事に吞みこまれ、事件後のひそかな流行語「生産性」を口にする人ももういない。

今改めて問う。

生産性ってなんやねん?

そりゃー生きていくのにお金は必要。明日の夢や小さな楽しみも大事。自粛自粛では息が詰まる。正直私も少し心がむしばまれてきた感じがするもの。

だけど、人間、まずは生きててなんぼのもん。あのぅひとこと言うとくわ。障害者も人間やで!自分は元気だからコロナにかかっても大丈夫。だから気にしない、というそこのあなた。それは、「弱者は死んでも構わない」という考え方につながるのではないかいな?

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障害マストゴーオン!

福本 千夏
イースト・プレス
2019-12-07

この連載について

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障害マストゴーオン!

福本千夏

脳性まひ者の福本千夏さん。 50歳にして就職して、さまざまな健常者と関わる中で、感じた溝を語ります。

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kiq “今改めて問う。 生産性ってなんやねん?” / 1件のコメント https://t.co/EjDbFXHBxg 7ヶ月前 replyretweetfavorite