星野リゾート 異端の経営

ヤメ星野」が語る、離れてわかった星野の“弱点”

独特な社風と強固な組織は同社の強みである一方、それになじめず退職する社員も存在する。「ヤメ星野」の証言から、同社の課題を探る。

※ 『週刊ダイヤモンド』2019年9月7日号より転載(肩書・数値などは掲載当時)

 「顧客は友人、社員は家族」──。入社式「契りの会」では、星野リゾートの価値観を代表の星野佳路から伝えられた後、新入社員たちは「手形の契り」を交わす。

 同業他社からは「宗教だ」と皮肉られるほど、会社に熱烈な愛着心を持った一枚岩の社員たちが、星野の組織力を支えている。ただ、“星野教”から抜けていく社員もいる。「ヤメ星野」から見た星野リゾートはどんな企業なのか。

Photo by R.S.

 「昔は『ホテルマンは採らない』と経営陣は言っていました」

 そう振り返るのは、星野リゾートで旅館再生事業にも関わったことのある男性だ。

 通常のベンチャー企業ならば、スキルを持った即戦力の人材を採用しがちだ。しかし星野リゾートは、マルチタスクという独特のスキルを素直に身に付けてくれる人が欲しかった。そのため、ホテルマンを意識的に採用しなかったというのである。

 このため星野リゾートで磨いたスキルは、同業他社では通用しにくい。「同業からの転職者も少ないが、星野リゾートから同業他社に移るケースも少ない。どちらかというと、全く違う業界に進む人が多い」と、ホテル業界をよく知る人物は打ち明ける。その一方で、辞めた社員が出戻るケースも多いそうだ。

旅館再生拡大で人材確保に奔走した苦い経験

 「マルチタスクでもなく、料飲部と宿泊部のある、どこにでもある普通の田舎のホテルでした」

 まだ軽井沢にしか拠点がなかった1990年代に入社し、星野リゾートの変遷を体験してきたある男性は、懐かしそうに話す。

 よく覚えているのは、旅館再生へと事業を拡大し、人材難に直面したときのことだ。

 「北陸の温泉地では、旅館は仲居さんが午後から翌日の午前まで働くのが常識。星野流のやり方を取り入れてもらうのには苦労しました。そこでその後の旅館の再生では、他の自社施設から来てもらうか、新人を採ることにしました」(前出の男性)

 再生案件を手掛けたことで露呈した人材確保という難題。星野リゾート“らしい”人材の育成に必死になるのは、過去に苦労した経験があるからだろう。

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星野リゾート 異端の経営

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経営破綻したホテルや旅館の再生で知られる星野リゾートが、国内外共に出店を急増させている。独特のアイデアで話題づくりを行い、業界の常識とは一味違った運営方法で成長を続け、17年には悲願の海外での自社施設の運営を開始した。独自の組織力を武...もっと読む

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