星野リゾート 異端の経営

トップのアイデアでも容赦なく却下! 「変な星野」の組織力

独特の社風から「宗教だ」と競合他社に皮肉られる星野リゾートの経営。代表の星野佳路にも「物申す」社員ばかり。
この「変な」組織こそが、星野リゾートが拡大する秘策なのだ。

※ 『週刊ダイヤモンド』2019年9月7日号より転載(肩書・数値などは掲載当時)

写真提供:星野リゾート

 「僕はいまだに反対です」──。星野リゾート代表の星野佳路がこう言い切る施策が進行中だ。現場は青森県十和田市にあり、八甲田山に程近い、奥入瀬渓流ホテルである。

 奥入瀬渓流ホテルは、星野リゾートが2005年に米ゴールドマン・サックスから運営依頼を受けて始めた再生案件の一つ。観光に適した秋は好調だったが、春、夏、冬は大赤字。そこで08年以降、最も赤字額が大きかった冬季にホテルを閉鎖していた。冬季の集客が困難な豪雪地帯に立地し、近くにスキー場はあったものの、地元客が中心で小規模だったからだ。

 ただ、現場のスタッフは冬季に他の施設に行く“出稼ぎ”を強いられる。生活が安定しないことへの不満が噴出し、冬季営業の再開は現場の悲願となる。歴代の総支配人は「冬季営業再開」の要望を佳路にプレゼンしては玉砕することを繰り返していた。

 冬季の営業中止から9年。夏、春は黒字化を果たした。総支配人の宮越俊輔(当時)は、「運営の体力が安定した。冬季営業でも黒字化できる」と豪語。経営陣と議論を繰り返し、ついに佳路が折れた。3年後の黒字化を目指し、17年から冬季の営業を再開したのだ。

創業105年で
4代目が急拡大させた同族企業

 星野リゾートは、1914年以来105年続く老舗旅館、星野温泉旅館を祖業とし、4代目社長が佳路だ。弟の究道が専務で、ファミリー色の強い企業である。

 95年に自社開発の軽井沢ホテルブレストンコート(長野県)を開業した後、マイカルの会員制ホテルだったリゾナーレ八ヶ岳(山梨県)の買収を皮切りに、バブル期のリゾート再生で躍進。一代で38施設(19年8月現在)まで運営を広げた。

写真提供:星野リゾート

 ホテル業界全体を見ると、東日本大震災で一時需要は冷え込んだものの、その後の稼働率は右肩上がりだ。ただ、星野リゾートの再生案件第1号のリゾナーレ八ヶ岳と、国内リゾートホテルの平均の稼働率を比較すると、星野リゾートのホテルの好調ぶりは一段上だ(下図参照)。

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この連載について

星野リゾート 異端の経営

週刊ダイヤモンド

経営破綻したホテルや旅館の再生で知られる星野リゾートが、国内外共に出店を急増させている。独特のアイデアで話題づくりを行い、業界の常識とは一味違った運営方法で成長を続け、17年には悲願の海外での自社施設の運営を開始した。独自の組織力を武...もっと読む

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