“教えない”教え方でチームに勝利をもたらした野村流指導法の極意

「教えないコーチは名コーチ」という格言がある。野村監督は“教えない”教え方を実践し、チームに勝利をもたらした。では、ビジネスや教育の現場で奮闘するあなたがそれを活かすには? 『野村の教え方 すべての指導者に贈る最後のメッセージ』から、日本プロ野球“最高の教師”の野村克也が指導法の神髄を語る。★毎週木曜日更新★

「教えないコーチは名コーチ」

本連載のタイトルで「教え方」と銘打っておいて矛盾するようだが、私が考える教育の理想は「教えないこと」だ。メジャーリーグには「教えないコーチは名コーチ」という格言があるという。まったく同感である。

現在のプロ野球では、バッティング、ピッチング、守備・走塁、バッテリーなど、分野ごとにコーチが置かれており、それぞれが専門的に技術的な指導を行っている。彼らの中には、教えることが仕事だと思っているのか、何かにつけ、選手のやり方に口を出しては指導をしたがる者もいる

だが、手とり足とりの指導、「ああしなさい」「こうしなさい」という教えすぎは、決して選手のためにはならない

コーチに言われたことを、言われた通りにやっていると、選手は自分で考えることをしなくなる。教えてもらわないと動かないように習慣づけられてしまう。最後には「教えてもらっていないからできない」とクレームを言い始める事態も起こりかねない。

だから私は折に触れ、コーチをつかまえては「なるべく教えるな」と言い続けてきた。

ヤクルトの監督時代、ピッチング練習を見ていたときのことである。

ほとんどのピッチャーが、ワインドアップでゆったりと振りかぶって投球している。こちらが指示をしない限り、小回りの利くセットポジションで投げようとするピッチャーは、ほとんどいない。

しかし、試合中にピッチャーが直面する場面を考えてみてほしい。一死一塁、一死一・二塁、一死満塁……アウトの数と出塁したランナーの組み合わせを数えれば、全部で21通りある。すべての組み合わせの中で、ランナーがいないケースがいくつあるかといえば、無死、一死、二死のたった3つである。

それ以外のケースでは、いつでも盗塁やバント、ヒットエンドランに対応できるよう、必然的にセットポジションでの投球をすることになる。そうであれば、日頃の練習の段階からランナーがいることを想定して投球練習をする必要があるだろう。にもかかわらず、ほとんどのピッチャーが漫然とワインドアップで投球していたのである。

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野村克也

古田敦也、新庄剛志、宮本慎也、稲葉篤紀、田中将大——。球史に残る名選手を次々に育て上げた名将・野村克也。日本のプロ野球“最高の教師”が「教え方」の神髄を語る。プロ野球ファンはもちろん、スポーツインストラクター、学校の教師、会社のマネジ...もっと読む

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