才能に恵まれない弱者に結果を出させる野村式指導法

野村監督は「こうしなさい」と一方的に選手を指導することはなかった。それはなぜか? そして、実際はどのように選手を教育し球団を強化していったのか? 部下や後輩、教え子の育成に悩むあなたに向けて、『野村の教え方 すべての指導者に贈る最後のメッセージ』から、日本プロ野球“最高の教師”の野村克也が指導法の神髄を語る。★毎週木曜日更新★

勝負にこだわるよりも選手の気持ちを考えた

人を育てる、そして変える上で最も重要なのは愛情を持つこと。それに尽きる。

「この選手をどうにかして一人前にしてやりたい」

「野球選手としてはもちろん、人間としても成長してほしい。幸せになってほしい」

愛情を持って接すれば、指導者の真摯な思いは必ず伝わる。人間同士なのだから、これは当然のことだ

例えば、ある試合のチャンスで選手に打席が回ってきたとしよう。この選手は、しばらく前から調子を落としており、そのまま打たせても凡退する可能性が非常に高い。普通に考えれば、代打を送りたくなるところだが、私は我慢して、そのまま打たせるケースが多かった。実際に、それで試合を落とした経験もある。

勝負にこだわるなら、代打を選択するのが正しいのだろうが、私にはできなかった。頭では代打だとわかっていても、その選手の気持ちを考えてしまう

もし代打を送ったなら、選手は腐ってしまうだろう。気持ちを腐らせたままシーズンを終えてしまう可能性もある。特に、その選手が長い下積みを経て、ようやく一軍でチャンスをつかんだり、地道な努力を重ねたりするのを見ていた場合は、なおさら非情に徹することができなかった。

私自身、テスト生として南海に入り、ゼロから這い上がった経験があったし、プロ一年目でクビになりかけた経験などもあるから、必要以上に選手に感情移入するところがあったのだろう。

監督としては甘さがあったのかもしれない。一方で、人を育てるにあたっては、それが正解であるとも考えていた。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

日本プロ野球“最高の教師”の野村克也が「教え方」の神髄を語る

この連載について

初回を読む
野村の教え方 すべての指導者に贈る最後のメッセージ

野村克也

古田敦也、新庄剛志、宮本慎也、稲葉篤紀、田中将大——。球史に残る名選手を次々に育て上げた名将・野村克也。日本のプロ野球“最高の教師”が「教え方」の神髄を語る。プロ野球ファンはもちろん、スポーツインストラクター、学校の教師、会社のマネジ...もっと読む

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません