今の時代、気合いと根性で努力しても結果は出にくい
今、多くの人が「日本社会は閉塞感に覆われている」と感じていると思う。 それはなぜかというと、未来に希望が持てないからだ。収入が増えてストレスから解放され、生活が良くなるという将来の展望が描けないからだ。
そんなとき私たちは、すでに成功した富裕層の教えに耳を傾ける。しかし冷静に考えてみてもらいたい。
たとえば、かつて電話と言えばダイヤル式の黒電話が主流だった。音楽を録音するにはカセットテープとレコーダーが必要だった。写真は銀塩フィルムを現像に出していた。しかしそれが今、すでに1台の端末ですべて実現できている。
これは氷山の一角で、ほかにも円高やLCCの格安航空券の普及で気軽に海外に行けるし、SNSで世界の人とも瞬時につながれる時代だ。
これほど環境が変わっている以上、成功法則も変化しているものがあると考えるのは当然のところだろう。
実際、今の時代は何も考えず、がむしゃらになって、気合いと根性で努力しても、結果は出にくくなっている。
昔なら飛び込み営業やテレアポをガンガンやれば、契約が取れた。夜討ち朝駆けで訪問すれば、「熱意に負けたよ」で買ってもらえた。ダイレクトメールを郵送すれば、それなりに反響があった。
しかし今は「非常識」として迷惑がられるし、ダイレクトメールを送れば「個人情報漏洩だ」などと、たちまちクレームが来るだろう。
確かに昭和や平成の時代は、不眠不休でがむしゃらに頑張れば成功できた。しかしそうした努力が通用する仕事は、AIやロボット、あるいはより賃金の安い外国人労働者がやるようになっている。
つまり、昔の富裕層が成功した時代と現在とでは、ルールが違うのだ。
では、どう違うのか。 今、結果を出しているのは、合理的に考え、戦略的に行動している人だ。
たとえばアスリートなども、ただ、がむしゃらに練習する人より、データや科学的根拠(運動生理学やスポーツ心理学など)をもとに、合理性で取り組む人が記録を伸ばしている。練習時間の長さが、必ずしも勝敗や記録につながらなくなっている。
経済活動の分野でも同様に、マーケティングには行動経済学やビッグデータの活用が重要になってきている。テレビを観る人も減っているので、テレビCMを打てば必ず売れるという時代ではない。
もはや「死ぬ気で働けば成功する」は通用しない
これは成功者の教えにも当てはまらないだろうか。
たとえば昔成功した富裕層が言う「死ぬ気で働け。死なないから!」「耐え続けろ。明けない夜はない!」「気合いが足りん。根性が足りん!」「諦めるな。諦めたらそこで試合終了だ!」などの教えがある。
むろん、一部の人はそれで成功すると思うが、それはもともとそういう強力な精神力や地力を持っていた人ではないか。凡人がそれを鵜呑みにしていたら、うつ、もしくは過労死になる可能性がある。
今の成功者たちは「ゆるいモード」で成果を出している
実際、個人の働き方や稼ぎ方も変わってきている。
私の周囲では、ある意味「ゆるいモード」で仕事をしているにもかかわらず、圧倒的な成功を収めている20代、30代の若き1億円プレーヤーが増えている。 そんな彼らには、たとえば次のような特徴がある。
- 頑張らない
- 我慢しない
- やりたいことしかやらない
- 自由が最優先
- 人脈づくりに興味がない
これは、かつての富裕層が言っていることとは少し違うことがわかるだろう。
かつての富裕層の多くは、休日や睡眠時間を削り、競合他社に勝つためがむしゃらに努力して会社の規模を拡大し成功してきた。
しかし現在の富裕層は、会社をあまり大きくせず一人や少人数のチームを好む。また、長時間働くのではなく、密度濃く短時間で集中する。普段は家から一歩も出ないという人もいる。
それでなんと年収1億円も稼いでしまうのである。
かくいう私自身、平成初期という、まだ、がむしゃらに努力すれば報われた時代に社会に出た。だからサラリーマンのときもそのように働いてきた。
起業してからも会社を大きくしようと奔走した。なので、過去の私もそのようなメッセージを主張することがあった。
しかし平成も後期になると、自分の価値観とは違うタイプの富裕層に出会う頻度が増えた。それが前述の「ゆるいモードで働いて成果を出している人」だ。
そして私自身の働き方・稼ぎ方も変わってきた。
以前は不動産投資ほか複数の事業を運営する会社の代表取締役として、都心にオフィスを構えて従業員を何十人も雇用し、私も毎日そこに通勤していた。
しかし今はオフィスを持たず、従業員も雇わず、ネットにつながるパソコン1台だけで仕事をしている。それでも収入は増え続け、会社経営時代より格段に儲かるようになった。
一方で、労働時間はどんどん短くなり、通勤という概念もなく、いつどこで何をしても自由、ほぼ毎日ブラブラしているような生活だ(実際にはいろいろ活動しているので、完全に隠居というわけではない)。
頑張らずワクワクすることをやるから成功する
そんな私自身の経験、そして新しい働き方・稼ぎ方をしている富裕層との交流から、共通してわかったことがある。それは、
- 頑張るという感覚がなくなるぐらいにワクワクすることをやる
- 合理性を重視し、物事に執着しない
- インターネットを活用し、仕組みをつくる
という点だ。 「なんと当たり前な」と感じるかもしれない。しかしその当たり前なことが、日常の小さな場面で思考や行動に表出する。
そこで、昭和や平成初期に成功を収めた富裕層を「旧世代1億円プレーヤー」、平成半ば以降に成功を収めた富裕層を「新世代1億円プレーヤー」と区分し、それぞれの思考パターンや行動パターン、習慣の違いを洗い出すことを試みた。
もちろん、不変の成功哲学もあるだろう。それは既存の自己啓発書に任せ、本連載では「新世代の成功哲学」にフォーカスしたい。
自由と収入と自己実現のすべてが手に入る、これからの理想的な働き方・稼ぎ方とは何か。そのために我々は、新世代の成功者の何を学べば良いのか——。
それをわかりやすくあぶり出せるよう、年収1億円プレーヤーの「旧世代」と「新世代」を対立軸として比較するという構成を取っている。 そのため極端に感じる部分があるかもしれないが、それは構成上の都合ということでご容赦いただきたい。
それに、どの世代にも例外は必ず存在するので、部分を切り取って「それは違う」などと批判することに意味はない。 本連載の狙いは、AIやロボットが労働市場を席巻するこれからの未来において、凡人でも成功できる考え方を抽出するところにある。
中には、あなたが「非常識だ」「そんなので成功できるはずはない」と感じる部分もあるかもしれない。そうであれば、なおさら「では、自分はこういう方法で成功を目指そう」と考えるヒントにしていただければ幸いだ。
そして「そんなやり方でもいいんだ」「自分もできそうだ」と感じたなら、未来はとんでもなく明るく、そして挑戦する価値のある人生だと思えてくるはずだ。
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