前回、将棋にはイケメンの形があるという解説をしましたが、「この形ではこの手を使うとうまくいく!」という手がよく出てきます。そうした部分的な形において駒をうまく使うテクニックを「手筋」といいます。そして「詰み」に特化した「詰将棋」の問題集があるように、「手筋」に特化した問題集もあります。
私のオススメは、『将棋・ひと目の手筋』(渡辺明 監修/週刊将棋 編)です。
「手筋」は中盤と終盤で現れます。中盤であれば「駒得」と「成る」ために、終盤であれば「相手の守りを薄くする」や「相手の攻めから玉を守る」ために使います(「詰み」は詰将棋なので除く)。
「手筋」は実力アップに重要で、詰将棋と合わせてぜひ勉強に取り入れてほしいです。
そしてインプットした「手筋」を覚えて、実戦でアウトプットしましょう!
なお、ちょうど先月に棒銀戦法と三間飛車戦法も含む「手筋」の問題集『将棋・ひと目の歩の手筋 ~将棋上達の入り口~』を発売しましたので、そちらもお手に取っていただければ幸いです。
終盤は相手の守りを薄くする手を考える
さて前回までの図を再掲します。
三間飛車で棒銀戦法を退治し、飛車を「成る」ことに成功しました。
ここから、いかに相手の玉を「詰み」にもっていくか、解説します。
【図1】
相手はこのままだと竜に飛車を取られてしまうので、△8一飛と飛車を逃げますが、こちらは▲7二竜と追いかけます。
【図2】
再び飛車取りです。かつ、玉と同じラインに竜を持ってきました。
攻める時は玉と同じラインに竜を持ってくると、いろいろな「手筋」が生まれます。
相手は△8四飛と逃げます。
【図3】
いよいよ終盤です。相手玉を「詰み」に追い込むために、「相手の守りを薄くする」手を考えたいところです。
「相手の守りを薄くする」ためには、「金を作る」のが大切と以前解説しました(第4回参照)。
この場合だと、▲7四歩と打って次に▲7三歩成とすれば歩を金にして攻めることができます。
なおここでは「手筋」として、▲5三銀という手も覚えておいてほしいので、銀を使う手を先に解説します。
【図3−1】
一見すると金で取られそうですが、5二の金が動けばこちらは竜で相手の玉を取って勝ちです。よって相手は銀を取れません。
もし次に▲5二銀成△同金▲同竜と進むと、銀を取られたかわりに金を2枚取って「駒得」になるうえ、「相手の守りを薄くする」ことにも成功します。
これも一つの「手筋」です。竜(飛)と相手の玉を同じラインに置くと、こういう手が生まれるのです。
金を作って攻めていく
さて戻って、今回は▲7四歩と「金を作る」手で進めていきましょう。
【図4】
相手は歩を成る手を受けられないので、持ち駒の角で△8八角と攻めてきます。
香を取られるのは避けられないので、▲7三歩成とします。
【図5】
△9九角成で香を取られて「駒損」しますが、気にせずにいきましょう。
終盤では「詰み」にいかに早く持ち込むかが最も重要です。
こちらは玉が美濃囲いにおさまっていて、竜と、とで「相手の守りを薄くする」態勢も整っています。現状、形勢をかなり有利に進めていると言えます。
せっかく「金を作った」ので相手の金や銀と交換しましょう。
▲6三とがいいでしょう。
【図6】
これを相手が△同金と取ってきたら、竜で相手の玉を取ることができます。
先ほどから何度か出てきた手口ですね。
相手はもちろん金は動かさず、別の手を指してくるでしょう。そこで▲5二と、と金を取ると、△同金▲同竜となり、なんと歩1枚で金を2枚取ることができます!
相手はそれをされたら嫌なので、△5一香と受けてきました。
【図7】
▲5二と、と取って△同香、
【図8】
歩で金を取って、「駒得」したうえに、「相手の守りを薄くする」ことにも成功しました。
さて引き続きどう攻めるか。竜で香を取ると、相手に金で取られて失敗です。
短気は損気です。
先ほど出てきた「手筋」を使ってみましょう。
▲5三銀としました。
【図9】
これを△同香と取ると、もうおわかりですね、竜で相手玉を取ることができます。
さすがにしつこいと思われたかもしれません。でもこうして繰り返し同じ「手筋」を解説することで、皆さんの頭にしっかり入ったかと思います。
しつこいくらいに「手筋」をインプットして、実戦でアウトプットすることが上達の近道です。
一気に「詰み」に追い込む!
さてもう相手には受けがなくなったので、△8九馬と桂を取ってきました。
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