第3回】体感◎の「ヌル湯」

日本には凄い温泉がいっぱいある!! 秋の行楽シーズン前にぜひ知っておいてほしい、日本の隠れた名湯を、TVチャンピオン全国温泉通選手権にて3連覇を達成した郡司勇さんが著したロングセラー『秘湯、珍湯、怪湯を行く!――温泉チャンピオン6000湯の軌跡』(角川oneテーマ21)より抜粋して紹介いたします。第3回は全国のヌル湯の名湯をご案内します。 ※本文中の成分総計は1リットルあたりの含有量、単位はミリグラム。また透明度はセンチで記述。各成分量も一リットルあたりの量。
 

山梨県・ホテル「不老閣」の岩風呂

長時間浸かることで湯治効果を生むヌル湯

 ヌル湯というのは30度台で湧出する温泉で、加熱することなくそのまま浴槽に掛け流して使われているものを言う。ヌルめの温度の浴槽に長時間入浴して、慢性病や筋肉痛などを治そうという温泉である。ヌル湯というのであるから、加熱していないのは当然だ。そのため源泉そのままの掛け流し温泉ばかりなので、私はヌル湯と銘打っている温泉は好感している。

 源泉の温度が高いと、地下深くで源泉とともにとけこんでいた気体成分が湧出口で一瞬に気化してしまうことが多い。しかし温度の低いヌル湯の場合は、気体成分を保持したまま浴槽に入れられている。ヌル湯の名湯の多くは気体成分を飽和した状態の浴槽となっているため、泡付きが体験できる。特に多いのは霧積温泉である。群馬県と長野県の県境近く、軽井沢のすぐ近くにある山中の湯で、入浴していると身体中にびっしりと気泡がつく。泉質は極めて純粋な石膏泉で、気泡の成分は炭酸というわけではない。

 このヌル湯が多いのが山梨県だ。岩下温泉、下部温泉、佐野川温泉、玉穂温泉などがある。
 岩下温泉は旧館の一階にプールのようなヌル湯浴槽があり、古くからの名湯である。このヌル湯浴槽はほとんど水風呂のようで、源泉湯口近くでほんのり温かく感じるのみ。しかし大きな浴槽の隅には祭壇があり、この源泉を奉っている。やはり温泉は神聖なものなのだ。
 足元湧出温泉で紹介した下部温泉の源泉は、ヌル湯である。「源泉館」の30度の源泉浴槽は足元の緑色の岩より源泉が湧出し、湯治の客は長時間の入浴をするのが一般的となっている。温まり用の加熱浴槽は、小さなものが別に設置されていた。

 佐野川温泉ははっきりとした硫黄臭のある単純硫黄泉であるが、池のように広い露天風呂がヌル湯の掛け流しとなっている。ここも気泡の付着が多い。また源泉口からはメタンも出ていると思われ、火が付く。
 玉穂温泉「中巨摩広域老人福祉センター」は褐色のモール系の温泉ながらヌル湯の露天風呂が人気で、加熱していない潔さが印象に残った。広い露天風呂に源泉が多量に掛け流しされているが、30度台前半のヌル湯になっている。モール泉の紅茶色の色が美しく、弱いすべすべ感もある。常連にはこちらに長時間入浴するのが人気で、大勢の客が入浴していた。内湯には加熱浴槽があるが温まり用の小さなもので、やはり露天風呂がメインである。

 新潟県にも駒の湯温泉をはじめヌル湯の名湯はいくつかあるが、一つ挙げるとすれば貝掛温泉「貝掛温泉館」だ。日本三大目の湯といい、目に効く湯として著名である。他の2ヵ所、福島県の微温湯と箱根の姥子は明礬泉であるが、ここは土類食塩泉である。苦味の効いた食塩泉であるが、成分のリチウムが効くのであろう。内湯、露天風呂ともにヌル湯で、露天風呂はほとんど体温より低くなっている。しかし入浴客はじっと動かずに長時間浸かっていた。浴槽の縁には木製の枕があり、そこに頭をもたれて入浴する。

ヌル湯は愛おしい

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秘湯、珍湯、怪湯を行く!

郡司勇

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