それでも私のことが一番好きなんでしょ、と思いたい

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回は「男性の弱さ」について。森さんはあるとき、男性が浮気するのはその繊細さゆえなのかもしれないと気づいたのだそうです。一体どういうことでしょうか。

妻を亡くした男の人は、あっという間に憔悴してしまう。

片や夫を亡くした女の人は、あっという間にたくましくなる。

この差は、肉体や体力に反して男の人が精神的に繊細だからだろう。女の人は、生む生まないに関わらず「出産」という果てしないエネルギーが内蔵されているので、やはり肉体や体力に反して精神的には強いのかもしれない。

男の人が浮気するのは、繊細だから?

突然だが、男の人は浮気をする生き物だ。妻や彼女を大切に思いながらも、浮気をする。女の人も浮気をするけれど、男の人の比ではない。なぜ、男の人は繊細で傷つきやすいにもかかわらず、浮気については神経が図太いのだろうか。たくさんの女の人とやりたい、というのは万国共通の男の人の願いで、本能かもしれないけれど。

今まで私は、この「男としてどうしようもない本能=たくさんの女の人とやりたい」を、単なるオスとしての性、子孫を残すべく世の理、みたいに思っていた。ところが最近、もしかしたら男の人が浮気する理由は、それだけじゃないかもしれないと気づいた。男の人の繊細さ、弱さも関係しているのではないだろうか、と。そう思うようになったきっかけは数日前に遡る。

先日、女性数人の会合で、「男性作家が書く官能小説はどうしてあんなにつまらないのか?」と参加者のひとりが言い放った。私も常々「美しすぎて嘘っぽいなー」と苦笑しつつ読んでいたので(それこそある種のファンタジーとしてはおもしろい)、うんうんと頷いたのだが、そこにいた女性陣が口々に「そうだそうだ」と賛同しはじめて、ついには「あんなセックスで感じるわけないのに」「もっと研究すべきだ」「自分本位も甚だしい」といった、悪口大会みたいになってしまった。

「男性は、本当に弱い生き物だから」

私も調子に乗ってしまって「日本男性はAV観ながらセックスっていうのもわりとあって(行為中に彼がAVを観はじめたらどうしますか)、私もこれを経験したけど、私の場合は単純に当時の彼の興奮材料だったようです」と暴露した。「興奮材料だったようです」と冷静に言いつつ、つまり私では彼は興奮しなかった、と女性陣に伝えたのだ(悲しい)。

すると別の参加者が「男性は、好きな女性を前にするとかえって緊張して、萎えてしまうそうですよ」と言った。なぐさめかな、やさしいな、と思ったけれど、さらに別の参加者が「萎えたら萎えたで言えばいいのに、男性って絶対に言わないんですよね」と言い、次いで別の参加者が「男性はあれを否定されると、人格から何から全否定された気持ちになるらしいですよ」と言った。「鬱病になったりね」と別の参加者が応戦すれば、「射精しなきゃダメだと思い込んでるんです。それって女性を無視した自分勝手な達成感ですよ」と何人かが苦笑する。最後には、「男性は、本当に弱い生き物だから」と誰ともなく言い、全員で頷いた。

男性は弱い、というか繊細だから、セックスの悩みや身体的コンプレックスなど、誰にも相談しないだろう。その代わりに、風俗に行ったり(風俗嬢なら誉めてくれるだろうし、男性を立ててくれるし勃ててくれる)、自分のことをやさしく受け入れてくれる女性と浮気したりする。繊細だから、たくさんの女性と経験することで自信をつけるのではないだろうか。当然、単純に女性が好きで好きで好きで、という場合が大半だろうが、案外、自信をつけたいため、繊細さを克服する(見ないようにする)ために、浮気に挑む場合もあるんじゃないかな、と思う。

でも、やっぱり最後には
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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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