第6回 春

『桜ノ雨』の動画を投稿している〈ロロ〉と、合唱部の入部希望者と思われた〈勇馬〉は同一人物なのか? 学校に登校して来ない勇馬に会うため、未来たちは勇馬の家へと向かう。
大ヒットボーカロイド小説『桜ノ雨』シリーズの第2弾『桜ノ雨 僕らが巡り逢えた奇跡』の一部を紹介します。シリーズ最新刊『Fire◎Flower』も発売中!

 

 車を十分ほど走らせたところに、教えてもらった住所はあった。
 山の斜面にぽつぽつと住宅があり、中でも一番高級感のある一戸が彼の住まいだった。
「すっごい豪邸!」
「ホントに」
「軽井沢かどこかの別荘みたいだね」

 海斗先生がインターホンを押すと、年配の女性の声が返ってきた。どうやらお手伝いさんらしい。
「お手伝いさんだってー」「マジすごいねー」めぐと鈴は更に興奮し、手を握りぴょんぴょんと跳ねる。
 門を開けてくれたのは先ほどの声の主のようで、わたしたちを見るやいなや、にっこりと微笑んだ。
「まあまあ! 音浜高校の先生と生徒さんでしたか。さあどうぞ中へ」
 室内に通されると、やはり豪華なリビングが待ち構えていた。シャンデリアにアンティーク調の家具、絶対に他界を思われる調度品の数々。
 女性は高級そうなティーカップに紅茶を注いだ後「少しお待ちくださいね」と部屋を出て行った。
 わたしたちは柔らかなソファーに腰を下ろし、紅茶をいただく。
 目の前にはクッキーも置かれていた。いつもなら真っ先に手を伸ばしそうな鈴なのだが、今日は借りてきた猫のように、じっと大人しくしている。
 時計の音だけが響いており、何故か喋るのがはばかられる。ここはそんな空間だった。
 勇馬って本当にどんな人なんだろう?
 怖い人じゃないといいな……。

 

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桜ノ雨 僕らが巡り逢えた奇跡

雨宮ひとみ /halyosy

「もしも、初音ミクが女子高生だったら・・・」で話題となったボーカロイド小説『桜ノ雨』シリーズ。第三弾として、スピンオフ作品『Fire◎Flower』が8月28日に発売されました。 それを記念して、シリーズ第2弾にあたる『桜ノ雨 僕ら...もっと読む

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