実家から逃げたい。けれど、社会で働くのも怖い

今回、牧村さんのもとには「母親から逃げたい。なのに稼いだお金が自身の医療費に消える」と悩む女性からのお悩みが届きました。「ずっと限界です。私は生きていない方がいい人間だと思います」と切実な思いを抱える相談者さんに対して、牧村さんは優しく寄り添いながら、母親からの脱出作戦を具体的に考えていきます。

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つらい。白馬の王子様に助け出される日はまだかしら……って待ち望んで連れてってもらったお城でまたもや囚われの一生を過ごしたくはないじゃん。どうしたら行けるのかな、本当にたどり着きたい場所へ、この足で。ってことを考えるこちらの連載、「ハッピーエンドに殺されない」。

今回は、「母親から逃げたい。なのに稼いだお金が自身の医療費に消える」とおっしゃる方の脱出作戦を考えていきます。ご投稿を拝読していきましょう。

今、母親から逃げ出したいのですが、仕事ができない状態が数年続いています。細々と内職で月に1〜2万程もらっていますが、貯金まではできません。定期的に病院に通っています。精神科に通い、双極性障害と診断されました。生理痛が重く、学生時代に通学やアルバイトも難しかった経験があります。少しでも自分の生活のクオリティを上げられるように、精神科と婦人科を受診しています。その診察代、薬代に月1〜2万のお金は消えます。

趣味の漫画を買うことをやめてしまったら心が死んでしまうと思うので、余ったお金で漫画を買います。毎月、毎日、お金に余裕がある事がありません。 交際している方にいつもお金を出してもらって、申し訳なく思います。付き合う時、結婚前提としていたので、「俺の稼ぎで2人で生活するのは厳しいと思うから、○○ちゃんも少し稼いでほしい」と言われていました。私はその時やる気に満ちていて、積極的にアルバイトを探していました。その姿を見て彼は付き合う事を決めたようです。

しかし、現実の私は、働いてはすぐに辞め、働いてはすぐに辞めの繰り返しをしてきた過去があり、働くのが怖いと思ってしまい、面接の約束をするところまでいってバックレたりしてしまいます。 私に合った職業を見つけるのが良いのか、そんな事は甘えだから生きていくために無理やりにでも稼げる仕事をするのが仕事をするという事なのか。 体調の悪化やストレスを抱えるのが目に見えているんです。

でも、私を愛さなかった母親からは今すぐ逃げたいです。仕事の異動で、私が母親のせいで一番ストレスを受けた時期の仕事内容に、母親が戻るそうです。 トラウマすれすれの思い出なので、今でも体が強張って母親の前でうまく動けません。 彼氏の住む実家と仲は良いですが、内職だけで家に置いてもらうのはできそうにないみたいです。


二進も三進も行かない状況です。ずっと限界です。私は生きていない方がいい人間だと思います。牧村さん、よろしければ私でも生きていける方法を教えてはもらえないでしょうか。生きるしかないなら、どうして生きていけばいいのでしょう。 つらくて無力で悔しくて、何もできない自分が情けないです。


(全文そのまま掲載しました)

よくぞ話してくださいました。

あなたはこうおっしゃった。「つらくて無力で悔しくて、何もできない自分が情けないです」。それは、なんとかしようとしているからこそ。そもそもはなから投げ出していたら、「何もできない」なんて悩まないもん。だから、内なる炎をたたえましょう。大事に大事に燃やしましょう

その熱で、ロケット大発射しなくてもいい、ゆっくり、ゆっくり、気球を浮かせていきましょう。あなたはもう乗り込んだのよ、飛び立つための気球に。あとはその小さな炎を守り、浮かせていくだけ。

じゃ、脱出作戦、考えていきましょっか。
わたしもいくつか考えたから、ここに書きますね。順番に行きます。

1 イチかバチか、じゃない。日常を一歩だけずらしてみる

追い詰められると人間は、二択に追いやられがちです。 生きるか死ぬか。 逃げるか留まるか。 ご投稿にもありましたね。「私に合った職業を見つけるのが良いのか、そんな事は甘えだから生きていくために無理やりにでも稼げる仕事をするのが仕事をするという事なのか」。

そういう、二択に追いやられてる状態の自分に気づいたらどうするか。

ちょっと、一歩だけ動くんです。日常から一歩だけずれてみるんです

例えば、内職、お家でやってますか? そこ、まさか、母親とのつらい思い出が染み付いてる部屋だったりとかしない? もしそうなら、同じ内職の仕事を続けながらでいい、ちょっと場所だけ変えてみませんか。

・車を何処かに停めて好きな音楽をかけながらやってみる
・彼や彼のご両親などに事情を話し、内職中だけでも部屋を貸してもらう
・外に出る気力もないなら、内職中だけでも好きな漫画のグッズを近くに置くとか、アロマでも焚いてみるとかして、自分が心地いいようにする

ほんと、イチかバチかに追い詰められた時こそね、どっちでもないとこにひょこっと出てみたら、違う景色が見えるもんですよ。


2 公的な仕組みを利用する

お住まいの地域に、役所とか、図書館とか、もしかして男女共同参画推進センター的なやつとかそういうのあったりしません? 市区町村や都道府県の名前がついている、公的なやつ。あれ、わたし、めっちゃ使います。地元すぎて安心できないようだったら、ちょっと隣町に行くとか、市区町村レベルじゃなくて都道府県レベルのやつにするとかで、ド地元から少し離れて、自分を守ります。

「母親との色々で体が強張る」
「双極性障害と重い生理痛で日常生活が難しい」
「働いてはすぐに辞めることを繰り返してしまい、働くのが怖い」

どんなことでもね、生きづらいことは公的な仕組みに相談していくんです。難しい書類とかじゃない、やさしいやつ。図書館のトイレとかに、「ひとりで悩まず声を聞かせて」みたいなポスターとか貼ってない? 役所のいろんなパンフレット置いてある棚に、「無料健康相談」とか「ナントカ講演会」みたいなやつ置いてない? ああいうやつです。あれをどんどん頼るんです。

だってそういうのは公的機関に参加者数の実績として残るから(相談内容は守られるはず)、「あ〜、地域の人がこんなことで悩んでるんだな」って数字として見えるようになるでしょ。それにね、「働いて子育てしてきた母親が娘に当たる」とか、そういう個人的なことは実は、社会の仕組みの中で起こってることだもんね。

男女賃金格差を見ると女性は男性の7割しかもらえてないし、仕事の面接で「お子さんが熱を出したらどうしますか」とか聞かれがちなのもだいたい女性。それで働く女性が子供に当たるのは、しょうがないとか全く思わないし全く擁護しませんが、構造的、だと思います。こういう構造的なものに対して、一人きりでがんばらなくて良い。それどころか、社会の仕組みの中でこそ根本解決することなんだと、わたしは思っています。

3 私的なつながりを金で補おうとしない
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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

catchtheclo 公的な機関に相談するの、すごく大事や。実感してる 3ヶ月前 replyretweetfavorite

kawainarumi1996 自分で出来ることは意外にあるものです。探して動いて少しずつ、変えていくと良いのですね。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

murasabi00 具体的かつ情熱的ぃ〜 まきむぅさんのそういうとこ好き。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

citrusalmon 言われた通り唇に指をあててみたら指の方があったかくて焦ったよね(お茶を飲んでいたので当然でした) 3ヶ月前 replyretweetfavorite