彼氏といるところを職場の人に見られたくない
【登場人物】
清田隆之
桃山商事・代表
1980年生まれの文筆業
森田雄飛
桃山商事・専務
同じく1980年生まれの会社員
ワッコ
桃山商事・係長
1987年生まれの会社員
清田 桃山商事の恋バナ連載、今月は「隣にいるのに遠くに感じる」というテーマでお送りします。
ワッコ なんだかエモいテーマ!
森田 あまり語られることのない話だけど、隣にいる恋人がふと遠くに感じる瞬間って結構あるような気がするんだよね。例えば、普段とは違う一面が出た時とか。
清田 相手が電話に出た時にそう感じることってない? 学生の時にお付き合いしていた彼女が福岡出身で、普段は標準語で話してるんだけど、実家から電話がかかってきた時にバリバリの博多弁で喋っていて。その時になんだか距離を感じた。
ワッコ あー、そういうこと、ありそうですね。
清田 自分の知らない顔を見てしまったというか……。
森田 妻と一緒にいて彼女に仕事の電話がかかってくると、当たり前なんだけど「おつかれさまです〜」みたいな仕事のトーンで出て、そういう時はちょっと遠くに感じるかも。イヤだというわけではなく、ただ「遠いな」って思う感覚なんだけど。
ワッコ 実家にしても仕事にしても、恋愛から距離があるからそう感じるんでしょうね。
清田 これは小説家の平野啓一郎さんが言うところの分人に関係する話だよね。簡単に紹介しておくと、人は相手やコミュニティによっていくつかの顔を使い分けていて、その複数の顔のひとつひとつを平野さんは分人と呼んでいる。分人はどれも表面的なキャラや仮面ではなく、全て「本当の自分」であるという捉え方をされていた。
森田 さっきの電話の話は、恋愛や結婚の分人の領域に、実家や仕事の分人がふと侵入してきたってことなのかなと思う。
ワッコ わたしも割とそうなんですけど、そこは絶対に混ぜたくないっていう人も結構いませんか?
森田 俺が昔お付き合いしていた女性がまさにそういう考え方の人で、それが原因で揉めたことがあった。もう10年以上前のことなのに、今でも鮮明に覚えてるんだけど。
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