職場への復帰を成功させる手順

自衛隊初の現場の臨床心理士として、トップの利用率と9割の復職成功率を誇り、これまで3万人以上の心を解放してきた玉川真里氏が、落ち込みから立ち直るメソッドをわかりやすく紹介します。『イヤな気分をパッと手放す「自分思考」のすすめ』をcakesで特別連載!(毎週火曜更新)

職場への復帰を成功させる手順

 休養期間の後は回復期に入ります。働いていた人なら、職場への復帰を視野に入れて、だんだん生活の改善を図っていくことになります。
 その際にも、一定の手順と期間を考えながら、焦らずに進めていくことが大切です。
 私が職場復帰を支援する際にとっている手順は、次のようなものです。

1 生活リズムの回復

 回復期になって最初にやるのは、生活リズムを戻すことです。
 休養期に一度、わざとリズムを崩して、何もしないようにさせるので、99パーセントの人は生活リズムが崩れています。
「今度は身体を馴らす時期」ということで、乱れた生活リズムを整えていきます。
 自宅療養の場合も、病院療養の場合も、まず消灯時間を変えてみます。目覚める時間を変えるのはけっこう苦しいので、消灯時間から始めます。
 でも、消灯時間というのは電気を消す時間で、寝なければいけない時間ではありません。暗い中でじっとしている練習でもあるのです。
 このときは不安や葛藤が強くなって、このまま自分はずっと病人でいるのではないかという不安が募ります。なので、時間や場所を設定しながら、「あなたはここまでできていますよ」と示してあげることが必要です。
 最終的に社会生活が営めるように、ルーティンの仕事がない人だったら11時前後に消灯、6時前後に起床といったような感覚に戻していく練習を、1ヶ月ぐらいかけてやるといいでしょう。

2 体力の回復

 生活リズムがきちんとしてきたら、次は体力です。寝たり起きたりの生活をしていたわけですから、びっくりするほど体力が落ちています。このときに本人はまた焦ります。身体が重く、ちょっと散歩しても息が切れたりあちこち痛んだりするので、自分がおかしくなってしまったように感じがちです。
 でも、「そんなものだ」というのを知っておきましょう。
 私がクライアントさんに説明するときは、こんなふうに言っています。
「入院したり、風邪やインフルエンザで寝込んだら、その後当分の間は身体がだるいですよね。1週間以上のお休みの後は、身体がだるかったり、意欲が湧かないものですよね。だから、生活リズムを回復させたり、体力を回復させようとしているときに、不安だったり動きづらかったりするのは当たり前なんですよ」
 毎日出勤したり家事をしたりするだけで、体力も使っているし、筋トレにもなっています。それをしなくなったら体力が落ちるのは当然です。そういうことも言ってあげるといいかもしれません。
 また、このときは人目が気になったりする時期でもありますが、体力の回復のために、まず家のまわりを散歩するところから始めてもらいます。慣れたら時間を決めて散歩してもらいます。

3 出勤感覚の回復

 その次は、「図書館に行ってみてください」「今度は人がたくさんいるお店に入ってみましょう」というふうに、段階を追ってやっていきます。
 これは、かかわっている誰かが一緒に考えて、「こうやってみて」というふうに手伝わないとうまくいきません。本人にまかせると必ずハードルを上げすぎてしまうので、セーブしながらできるように、かかわってあげてほしいです。
 職場に行くとなると通勤がありますよね。そうなると、みんなの目線とか、気になるところがたくさんあるはずです。また、主婦だったら近所の人の目が気になったりするでしょう。
 ですから、徐々に馴らしていくのに最適なのは図書館だと私は思います。図書館まで歩いていって、そこで一時過ごします。次の段階として、本や新聞を読んだり、本を借りたりしてみます。図書館が遠いなら、カフェに行って、本を読みながらコーヒーを一杯飲んで帰ってくるのでもいいです。
 これは、生活のリズムと体力の回復の確認でもありますが、適当に外出するのと違って、図書館に通うというのは出勤に近いわけです。
 でも、「毎日続けるのが億劫だ」という気持ちと闘わないといけないし、人に会うので対人関係の緊張や不安もあって、ものすごく疲れます。でも、疲れるのが当たり前なので、それに慣れる練習です。
 このときは無理しがちなので、自分の気分を毎日計測してグラフを書いてもらいます。これは「1日の振り返り」として、休んだ初期から毎日つけてもらっているもので、この期間もそれを継続していきます。
 これによって、自分がどれだけ動いているかを確認しながら、自分と向き合って「ここでストレスがあったかな」とか「このとき考えたことは何だろう」などと、記録していきます。これは認知行動療法です。
 記録用紙には、「(自分に対する)今日のほめ言葉」という欄を作っています。これは私にとって一番の要かなめなのですが、みんな、なかなかここが書けません。
 でも、これがどんどん書ける人は、逆に自分の弱さと向き合えていないと判断できます。表面だけつくろっているので、そういう人のほうが難しいのです。
 多くの人は書けないのが普通なので、「今日のほめ言葉が見つからなかった自分に気づいたことをほめる」「書けないと書いたことをほめる」「書けない、でも、書けないという字を書けてよかった」などと書かせます。見つけられないときでも、そういう小さいものを拾う練習をします。
 毎日、グラフとともに「今日のほめ言葉」などが書けるようになると、生活リズム、体力、そして認知行動のところまでよくなってきたということなので、お医者さんに、これから普通の社会生活を送っていいかどうか助言をしてもらいます。OKということになったら、復職に向けての準備を始めます。
 これは、その時点の体調に合わせて柔軟に調整することが必要です。
 対人関係の復活を重視しつつ、1日勤務できる練習をしていきます。得意な仕事や負担の少ない仕事から始めていくのがいいでしょう。

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玉川真里

自衛隊初の現場の臨床心理士として、トップの利用率と9割の復職成功率を誇り、これまで3万人以上の心を解放してきた玉川真里氏が、落ち込みから立ち直るメソッドをわかりやすく紹介します。『イヤな気分をパッと手放す「自分思考」のすすめ』をcak...もっと読む

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コメント

88pappillon88 参考になる〜 7ヶ月前 replyretweetfavorite

yomimonocom 「一定の手順と期間を考えながら、焦らずに進めていくことが大切です。」 元自衛隊の臨床心理士・玉川真里さんの連載「イヤな気分をパッと手放す「自分思考」のすすめ」 第48回「」を公開! https://t.co/1bvFI1P7cO 7ヶ月前 replyretweetfavorite