うつの各段階で、まわりの人ができること
うつの発症から回復までは、もちろん個人差はありますが、ほぼ共通した段階があります。私が実際にクライアントさんたちとかかわる中で、その段階をどう見極め、どう対処しているかを簡単にご紹介しようと思います。
1 初期……もしやと思ったら記録を残しておく
うつの初期に現れる症状は、イライラや疲労感です。キャパオーバーになっている気がするのに、「もうちょっと頑張ろう」とやってしまうのです。日本には我慢が美徳みたいな風潮がありますから、ここに気づけるかどうかです。
家族や友人、子どもなどから見て「普段と違ってイライラしているなあ」とか、「なんか、当たられるなあ」とか、「ずいぶん疲れているな、寝てばっかりだなあ」とか、そういうところで意外に気がつく場合があります。
そういう場合に、勝手に「私たちが悪いから」とか「仕事で無理してるから」とか解釈せずに、「こういうふうに見えるよ」と言ってあげることも大事だと思います。
言っても、たぶん「そんなことはない」と否定されます。まあそういうものです。
でも、身近な人は、その記録だけはつけておいてほしいと思います。いつぐらいからこんな状況だったか、わかるように。そういう記録があれば、お医者さんや心理の専門家がその人の波を知ったり、予測をしたりといろいろな使い方ができるからです。
2 発見期……休みを取らなくなったら要注意
次が発見期です。これは、私のところに相談に来るとき、あるいは「壊れてしまったかな」と思えるときです。
このときは、多くの人は休めなくなっています。
「ちょっと体調が悪いから休んでみようかな」と思うときはまだ健康なときです。オーバーワークや、抑うつがひどくなればなるほど、本人は休んではいけない気がして、「遅れを取り戻そう」みたいな気分になります。
借金をして、最初のときは普通に返すつもりでも、金額が多くなってくると、それを返すためにギャンブルなどに手を出して、やめられなくなるのと一緒です。
私も、最後のうつのときには休めなくなりました。休んだら悪いような気がするのです。自分がいないと回らないという、非常に傲慢な考えになります。こういうときは要注意だと思いましょう。
「顔色が悪いから休んだほうがいいよ」と言っても、なんとか理由をつけて休まなくなったら要注意です。
そうなったら内科でもいいし、どこかの機関に相談してください。それまでの記録を見せて、「こんな感じなんですが」と相談すればいいと思います。
このとき、本人のまわりでは負の連鎖が起きています。イライラしているので誰かに当たったりして、不機嫌にさせてしまいます。それで人間関係がうまくいかなくなり、仕事や家庭環境もぎくしゃくします。
それによってまたイライラするか、疲れるか、または自責感に陥るということで、グルグルと負の連鎖に入り込んでしまいます。
そういうところに、まわりも本人も気づけるかどうかです。「悪いことが続いている」というのは、だいたい、そういうときなのです。
たとえば、すれ違うときに「お疲れさまです」って言ったのにスルーされたとしますね。健康なときだったら、「何か考え事でもしていたのかな」とか、「あれ、具合でも悪いのかな」とか、相手に対して配慮することができます。
でも、具合が悪くなっているときというのは、「えっ、私が何か悪いことした?」など、自分の失敗や欠点探しに入ってしまうのです。それで、負の連鎖が起こりやすくなるのです。
ですから、このへんもちょっと気をつけて、まわりとギクシャクしたり、よくない出来事が起きるのは、イライラや過敏さが作り出している連鎖ではないかと疑ってみることです。
3 休養期……ストレスだけ注意して、本人にまかせる
そうして休養期に入ります。
ここはしっかり休養してエネルギーを蓄えないといけないときです。
でも、このときにはいろいろな不安が強くなります。
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