第1回】奇跡の名湯「足元湧出温泉」

日本には凄い温泉がいっぱいある!! 秋の行楽シーズン前にぜひ知っておいてほしい、日本の隠れた名湯を、TVチャンピオン全国温泉通選手権にて3連覇を達成した郡司勇さんが著したロングセラー『秘湯、珍湯、怪湯を行く!――温泉チャンピオン6000湯の軌跡』(角川oneテーマ21)より抜粋して紹介いたします。第1回は源泉に直接入浴できる東日本の名湯です。

北海道・丸駒温泉

足元が源泉の温泉がある 

 温泉を巡り始めて30年、全国約6000ヶ所の温泉施設に入浴してきて切に感じることは、繰り返すようだが「大切なのは湯の鮮度である」ということである。
 私の場合、TVチャンピオンという性格上徹底して源泉の成分や匂い、味、肌触りなど湯の特徴や個性を判別する。清澄な湯から濃厚な湯までさまざまあるが、どれも温泉そのものには優劣がなく、神聖なものであると考えている。

 一番重要なのは、私が現在入っているこの浴槽の湯が、果たしてどれだけ源泉の状況に近いのか、ということである。なかでも最も優れているのは、敬意を込めて「足元湧出温泉」と呼んでいるが、源泉自体が湯船であるというもので、これ以上新鮮なお湯はあり得ない。これはまさに奇跡的な湧出状況といえる。湯量と湯温が絶妙なバランスを持っているため源泉に直接入浴できる、たいへん貴重な温泉である。

 足元湧出温泉は全国でも20~30か所程度しかなく、どれも珠玉の温泉群だ。北海道の丸駒温泉、青森県の酸ヶ湯温泉、秋田県の乳頭温泉「鶴の湯」、岩手県の鉛温泉「白猿の湯」、群馬県の三国峠近くの法師温泉、岡山県の湯原温泉郷の真賀温泉「幕湯」、湯原温泉「砂湯」、奥津温泉「奥津荘」、鳥取県の三朝温泉「旅館大橋」、大分県の別府にある明礬温泉「泥湯」、鹿児島県の湯川内温泉、熊本県の阿蘇山の山麓にある地獄温泉「すずめの湯」など、日本を代表する名湯と呼ばれる湯の多くは源泉が浴槽になっている、足元湧出温泉である。

 足元湧出温泉の一番の特徴は、入ると湯の流れを身体全体で感じることができるということだ。新鮮な湯の証である、湧出地点から気泡がときおり立ち昇ってくるのが見える。また大地の岩が露出していて直に触れることもできる。まさに自分の足の下から湯が湧出している、と身体で実感できるのである。
 これは非常に感動的な体験だ。単に健康に良い、気持ち良いという温泉認識を越えて、温泉が大地からの恵みであり、神々しいものである神秘的な想いに包まれる。みなさんにもぜひ、体験してほしいと思う。

東日本の足元湧出温泉

 北海道の「丸駒温泉」は支笏湖のほとりにあり、周回道路ができるまでは対岸の千歳側から船でしか来られなかった秘湯だった。現在は道も良くなったが、丸駒温泉旅館の湖畔露天風呂が足元湧出温泉で源泉浴槽である。湖面と同じレベルにある露天風呂で、底は粗い砂地だ。ここから温泉がどんどん湧出し、湖面に流れ去っている。砂は底から湯が湧いていることもあって柔らかく、足をもぐらせると暖かい湯の湧出が足を通じて感じられる。
道南にあるアンヌプリを主峰とするニセコ連峰には温泉が数多くあるが、細い林道を走り寂しい山の中の一軒宿「ニセコ薬師温泉」が素晴らしい。北海道は本州のように開発されておらず、町か畑か原野である。地形的に人間の手が入っている地域はオールオアナッシングで、このような秘湯の存在は少ない。

 露天風呂も含むと三つの浴槽があり、すべて足元湧出温泉の源泉浴槽である。大き目の内湯は混浴で、赤褐色に濁り足元の石の隙間から湧出している。鉄分の変化であろうか、年に数回綺麗な緑色になるとのことで、その写真が掲示されていたがまだ体験したことがない。小浴槽の内湯は透明で、炭酸の気泡とともに湯が底から溢れているのが見える。湧出量が多く新鮮なので濁らないのと、気泡の存在感や炭酸味で個性を発揮していて、温泉仲間ではこちらの評価が高い。

 青森県では八甲田山の中腹にある酸ヶ湯温泉だ。硫黄分を含有した酸性泉で、大きな体育館のような千人風呂で有名である。自噴の四つの源泉があるが、中でも一番大きな「熱の湯」が足元湧出温泉だ。混浴で仕切りはないが、中央に男女の境目が表示だけされている変わり種である。

 秋田県では近年人気の乳頭温泉のうち、白濁した湯で、古い茅葺き長屋の風情が秀逸な「鶴の湯温泉」が足元湧出温泉である。庭にある一番大きな露天風呂の「鶴の湯」浴槽が足元自噴している。白濁しているが湧出地点からは多量の気泡が上がっており、温度も熱くなってきて底から自噴しているのが一目瞭然である。

 岩手県の花巻温泉郷にある鉛温泉の一軒宿「藤三旅館」にも足元湧出温泉の天然岩の浴槽がある。「白猿の湯」と呼ばれ、宿の中心が深く地下になっており、大きな吹き抜けの底に川原と同じレベルで温泉が湧出している。浴槽は深く、立って入浴する温泉として長野県は上諏訪温泉のレトロな共同湯「片倉館」や秋田県の秋の宮温泉の「鷹の湯」などとともに有名だ。

 福島県でも南部の二岐温泉「大丸あすなろ荘」にも足元湧出温泉の内湯がある。庭先にある共同湯のような湯小屋で、一度外に出てから浴室に入る。白い滑らかな一枚岩に一部亀裂が入っており、熱めの湯が湧出している。

 群馬県の三国峠近くの法師温泉は綺麗な湯で、底の石がよく見える。丸太で四方に分けた浴槽で、足元湧出温泉の源泉風呂として有名である。

 

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NEeNoo3 温泉に行きたい。温泉に浸かり疲れたい(O_O) 【第2回】自然に浴する野湯の醍醐味|郡司勇| 約5年前 replyretweetfavorite

kadokawaone21 【再びのお知らせ】cakesさんにてテレビ東京「TVチャンピオン」の全国温泉通選手権で3連覇を果たした郡司勇さんの連載がスタート!第1回()は<奇跡の名湯「足元湧出温泉」>です! https://t.co/ep23mmqtYJ 約5年前 replyretweetfavorite

satoshikkc 温泉とか行きてーなー。 約5年前 replyretweetfavorite

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