日本人の悲哀力
やっぱり厳しいよね…。そういうもんだよね…。でもがんばらなくちゃ!
文章を定期的に書くようになる。そして不特定多数の人に見せるようになる。
すると一度は考えることがある。
それは「誰にでも好かれる、万能なテーマってなんだろう?」ということ。
友情(大切な仲間に感謝)、家族愛(子供が好き、妻が好き)。
どっちも悪くはないけど、狙って書けば、書き手の「これならウケるだろう」という魂胆が透けて見えそうだ。
感動(ほっこりする話)は?
うーん、安易に泣かせようとする文章に、辟易する人も多い。
自虐(私ってこんなにダメ)なら人を選ばない?
いや「そんなことない」って、周囲から否定してほしい感じが見えたら面倒。
そんな私が最強だと思うのは、「悲哀(せつないなあ)」です。
このサラリーマン川柳は、“サラリーマンあるある”を五・七・五形式で自由にまとめたものですが、受賞する作品のほとんどが「悲哀」をテーマにしています。
あらあら、せつないね…って苦笑させる感じが、万人の心をつかんでいるからです。
なさけない、せつない、かなしい、はらだたしい、もどかしい。
いろんな感情がいりまじりながらも、行き着く先には「どこも似たようなものだ」という安心感があり、「うちも捨てたもんじゃない」という希望があります。
おなじみ『リポビタンD』のCMは、テレビ版では「リポDを飲めば俺たちは最高だ!」という無敵感にあふれていて、まあ、飲んだ後はこんなに元気になれる! としっかり印象づけるための戦略なんだろうと察します。
一方、ラジオ版で伝えているのは、テレビとは対象的な「とほほ」な感じです。
あきらかにダメな感じ。
ぜんぜん思ったようにいかない、腹立たしさと切なさと滑稽さがあふれています。
体型が気になっていたり、医者から注意されたりして、日頃から(運動しなきゃなあ)と思っている“だけ”であろう平凡な夫が、ついに前向きな気持ちで「体重を減らすためにジョギングでも始めよっかな〜」と具体的な行動に移そうとする。
テレビ版だったら、ここで即座に「ファイトー! イッパーツ!」という威勢のいい掛け声によって、強引にしめくくられるかもしれない。
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