※ 『週刊ダイヤモンド』2019年6月29日号より転載(肩書・数値などは掲載当時)
「結局、S&P500を買うのが間違いないんですよ」。ある日系運用会社の幹部は、主に日本株を取り扱っているはずの金融機関の関係者の間で、以前からこんな考え方がひそかに語られてきたと打ち明ける。
記者がこれまで日本株ストラテジストを取材してきた際も、複数の専門家から「オフレコ」と称して同様の発言を聞いたことがある。職責上、表立って米国株の優位性を口にすることは、はばかられるが本音では、プロの目からも米国株は日本株より魅力的な存在に映っているというわけだ。
冒頭のS&P500とは、ダウ工業株30種平均と双璧を成す、代表的な米国の株価指数。ダウ平均は米国上場の主要30社、S&P500は主要500社の株価から算出されるが、両者の過去のパフォーマンスに取り立てて大きな違いがあるわけではない。
日経平均株価とよく比較される存在として、一般的な知名度はダウ平均の方が高いようだが、機関投資家が指数連動型のETF(上場投資信託)に投資することが多いのはS&P500。同指数をめぐっては、「オハマの賢人」と呼ばれる大投資家、あのウォーレン・バフェット氏(88歳)が自分の死後に備え、妻に「資金の90%をS&P500に投資しなさい」との言葉を残しているのは有名な話だ。
そんな米国株の何がすごいのか、日米で比べてみると一目瞭然。ダウ平均と日経平均の30年前(1989年)の年初を100として指数化すると、ダウ平均はこの30年間で11.1倍に上がる一方、日経平均はいまだ当時の水準すら回復していない(下図参照)。
これだけ差が開いてしまうのは、日本株は89年がちょうどバブル期と重なり、同年末に史上最高値を付けるような局面での高値水準がチャートの始点(3万1581円)となったことも影響している。
とはいえ、米国株は日本株と異なり、ITバブル崩壊やリーマンショックなどを経ても基本的に上昇局面が続いてきた。よって戦後どこを起点にしても、「じぶん年金作り」をする上で一つの目安となる「30年」の時間軸で見ると株価は上振れし、日本株を長らく凌駕してきたのは周知の事実だ。
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