上野千鶴子の一貫力
わかりやすいから、読んでるこっちまで賢くなった気がする。
この文章で自分は何を言いたかったのか。よくわからなくなることはありませんか。
私はよくあります。
そういうとき、私は「みんなにいい顔」をしようとしているんだな、と思ってます。
たとえばこんな、平凡な文章があったとします。
“今日は結婚が決まった友だちと喫茶店で会いました。私はメニューを見ずにコーヒーを注文し、友だちはメニューを熟読してから、かき氷を注文しました。その店のおすすめはかき氷なんだとか。もっと早く教えてほしかったな。でもそのお店はコーヒーも豆やカップなどこだわっているふうでした。私たちは別れを惜しみつつ、楽しい時間を過ごすことができました。”
なにがあったのかはわかる。でも、何が言いたいのかはわかりづらい文章です。
この文章のどこがいけないんでしょう。
自分の文章力を上げる近道の一つは、他人の“あかん文章”を添削してみること。
少しいじわるな視点で考えてみてください。わかりましたか?
私は、話の筋があちこちに分かれていることが、わかりづらい文章にしてると思います。
上野千鶴子さんの文章を読んでみてください。
少々複雑ですが、一本の太い筋が通っています。
上野千鶴子さんいわく、グルーミング産業とは、美容師やネイリスト、エステティシャン、マッサージ師など「相手をなで、さすり、いたわり、かまい、本当はどうでもよいささいなこだわりや苦楽を共にして一喜一憂してくれる」職業のことだとか。
この文章が伝えたいことは、「リアルな人間関係で傷つきたくない人が増えた」から、「擬似的にかまってくれるお店のニーズが増えた」ということでしょう。
短い文章ですが、昨今の日本人の心理分析をしたり、気持ちを代弁したりするなど、主体がころころ変わるのに、読み手としてはスムーズに「言いたいこと」を理解できます。 cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。
難解な話なのに、なぜ筋が通るのか。