FOK46—フォークオーケン46歳
【第23回】ミルクと毛布

昔の恋人から呼び出され、彼女のおいのために歌の作曲作詞をするよう依頼されたオーケン。人生も半ばも過ぎ、さまざまな出会いと別れを経てきたオーケンは、これから長い一生を生きる予定の赤ん坊に、どんな歌を贈るのでしょうか。大槻ケンヂさんの弾き語り私小説、いよいよクライマックス。

 母のお腹の中の、絶対の、安らかな眠りから人は目覚め、やがてまた、今度はおそらく永遠の、絶対の眠りにつく。
 眠りから目覚め、また眠りにつく。
 生まれて、そして死ぬということは、言ってしまえばそれだけのことなのだ。

 ただ、前者と後者の眠りには、それは大きな差がある。前者が絶対のやすらぎに包まれたものであるのに対し、後者は、わからない。その永遠の眠りがどのような質のものであるのか、覚醒している間は…その期間が長かろうと意外に短かろうと…これはわからない。

 わからないから人は悩むのであろう。自分が、永遠の眠りについたとき、自分が覚醒していた期間にしてきたことを、眠りは、それが正しかったと認識して、絶対のやすらぎを与えてくれるのであろうか。そして、絶対の安らぎを与えてもらえるに値するほど、自分は覚醒していた期間に、何かを成し遂げられたのであろうか。わからない。そもそも、母の胎内にいたとき以来やがて訪れる長い眠りは、母の胎内にいたときのように、絶対のやすらぎに満ちたものなのであろうか。もし仮にそうであるとするなら、なぜ、人は、やすらぐことのできない覚醒の期間を与えられているというのだろうか。もしそうでないなら、人は一体いつやすらぐことができるというのか。死してさえなおやすらぐことができないというのなら、なぜ人は生まれてくるのか。それは何かの罪のためなのか。覚醒とは罪をあがなうための生まれて最初の罰であるとでもいうのか。人はなぜ……

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小説 FOK46—フォークオーケン46歳

大槻ケンヂ

30年以上音楽活動を続けてきた、ロックミュージシャンの大槻ケンヂ。楽器演奏と歌を歌うのを同時にできないという理由で、ボーカルに徹してきた彼が、2012年、ギターの弾き語りでのソロツアーを始めた。その名も『FOK46(フォークオーケン4...もっと読む

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コメント

kusanagikenta やさしい想いと、やさしい子守唄。眠り目覚めまた眠るまでのうた。 5年弱前 replyretweetfavorite

sippoganai のほ学で聞いたレア「ミルクと毛布」を反芻しちゃった(^ω^) 5年弱前 replyretweetfavorite

t_take_uchi ホント、いったいどこいくんだろね。 5年弱前 replyretweetfavorite

spring41 読了。子守唄をギターで作詞・作曲する大槻ケンヂ。 5年弱前 replyretweetfavorite