タワマンのこじれメンタリティー
【登場人物】
清田隆之
桃山商事・代表
1980年生まれの文筆業
森田雄飛
桃山商事・専務
同じく1980年生まれの会社員
ワッコ
桃山商事・係長
1987年生まれの会社員
清田 桃山商事の恋バナ連載、今月は「男らしさクライシス〜ダサいをめぐって」というテーマでお送りしています。
森田 前回は収入にまつわるダサいエピソードを紹介しました。分譲マンションの見学に行った清田が「ローンの組めないご主人様」になった話は、哀愁漂う名エピソードだった。
ワッコ マンションといえば、この前とある会社の男性達と合コンしたんですけど、住んでる場所の話になったときに、一人の男性が「港区に住んでる」と言ったんです。そしたら後輩の男性が「先輩の家はタワマンなんですよ」と補足してきて。
森田 抜かりない後輩プレイだね。
ワッコ わたし達も「タワマンすごーい!」とか適当にぬきぬきしたんですけど。
清田 ぬき便乗(笑)。
ワッコ そしたらその先輩男性が「いやまあ、3階なんだけどね」と言ったんです。その感じがすごいめんどくさいし、ダサいなと思いました。
森田 なるほど。自慢と自虐の両方が混ざっているからダサめんどくさいんだろうね。「タワマンはすごいけど、俺はその中では『下』なんで」っていう。
清田 「東大の落ちこぼれです」みたいな。
ワッコ 港区のタワマン3階は東大の落ちこぼれ(笑)。こっちは手を出してぬく態勢になってるんだから、素直に受け止めてほしかったです。そもそもどうでもいい話だし!
清田 これはネット記事で読んだんだけど、タワマンの上層階と下層階ではステイタスの格差があるみたい。例えば30階建てだとすると、1-10、11-20、21-30みたいな感じでエレベーターが別れているから、そのステイタスがいちいち可視化されちゃうってのはあるのかもしれない。
ワッコ 「あちらに乗る方ですね」みたいなマウンティングがあるのかな……。
森田 タワマンに縁も興味もない人にはよくわからない差だから、それで自慢と自虐をまぶされても混乱するだけだよね。
マンスプレイニングのダサみ
ワッコ 中途半端な自慢もダサいですけど、知ったか系もダサいと思っていて。
森田 なるほど。
ワッコ ニコ生番組への投稿でも、知ったか系のダサエピソードはいくつかありましたよね。代表的なところだと、「ジャズのライブレストランで、男性が音楽にあまり詳しくなさそうな相手の女性に対して、浅い知識をひけらかしているのをよく見る。女性がそれに興味を持って質問したら、途端にボロが出て答えをはぐらかす。見栄とプライドが邪魔をして正直に『わからない』『知らない』と言えない男はダサいと思う」というのがありました。
清田 個人的には、生半可な知識で何かを語るのって怖くないのかなと思ってしまうんだけど。
ワッコ 確かに、何を聞かれるかわかんないですもんね。
清田 これはいわゆるマンスプレイニングにも通じる話なのかもしれない。
森田 補足しておくと、マンスプレイニングは「man(男)」と「explaining(説明する)」を組み合わせた造語で、レベッカ・ソルニットという作家のエッセイ「説教したがる男たち」がきっかけで広まった言葉だよね。
ワッコ マンスプは、日本でも使われるようになってきている印象があります。
森田 ソルニットのエッセイでは、彼女と友人が参加した、裕福な家で開かれたパーティーでの一幕が紹介されている。主催者である大金持ちの男性にソルニットが自己紹介して、「どんな本を書いているのか?」と聞かれたから、最新作ではある写真家の本を書いたと話し始めた。そしたら男性は話を遮って「今年出たばかりのその写真家に関するとても重要な本を知っているかね」と言って、その「重要な本」についてああだこうだとまくし立てたんだって……と言っても、明らかに本自体は読んでなくて、新聞の書評で見ただけっぽかったんだけど。
ワッコ オチがちょっと見えてきました。
森田 まくし立てる男性に向かって、横にいた友人が「それ、彼女の本ですけど」と言ったら、彼はショックで口を利けなくなってしまったらしい(『説教したがる男たち』レベッカ・ソルニット 左右社)。
ワッコ 奇跡的なダサさですね(笑)。生半可な知識を本家本元にぶつけてしまうという。
清田 さっきのジャズのエピソードがそうだったように、日本でも男性が女性に説明/説教したがる傾向があるのは確かだよね。
竹槍で特攻してくる男たち
ワッコ そういやタワマンの人たちとは別の合コンでも、違う種類のダサさに遭遇したんです。
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