もし自分がこの本を編集するなら

任天堂の元社長・岩田聡さんのことばをまとめた書籍『岩田さん』について、『嫌われる勇気』ライターの古賀史健さん、『漫画 君たちはどう生きるか』編集者の柿内芳文さん、『岩田さん』編集担当の永田泰大さん、cakesを立ち上げた編集者の加藤貞顕が、語り合う座談会。最終回は、それぞれが『岩田さん』を作るとしたら……?

42歳で任天堂の社長できる?

加藤 本の後半に宮本さんと糸井さんのインタビューがそれぞれ入ってるじゃないですか。これ、2つともテーマが友情ですよね。ほんとに友だちだったんだなというのが。こんな人間関係なかなかつくれないな、っていうぐらいのいい友だち。ここはぜんぜん別の場所になっていますよね。

永田 そうですね。

加藤 こんな2人と、こんな友だちになってる岩田さん、すげーかっこいいなって思って読んでました。

古賀 それがまさに、糸井さんが言ってた「弟性」。

加藤 ああー。

古賀 宮本さんにとってもそういう関係だったんだろうし。弟のような友だちというのは、うれしい存在ですよね。

加藤 たしかに、たしかに。

永田 その「弟」という表現も、糸井重里にしかできないと思うんですよね。

古賀 そうですよねえ(笑)。

加藤 あんな偉い人捕まえてね。さすがですよね。

永田 宮本さんのあの自然体もすごいと思うんですよね。自分に憧れていて、ちょっとライバル心もある、いってしまえば「他社だった人」が、自分の会社の社長になることをふつうに歓迎して、とてもいい関係を築いている。すごいなぁと思います。

加藤 ふたりに関係性がすごいですよね。そしてそれを任命した前社長・山内博さんもえらい。なかなかできないですよ。

永田 山内さんはほんとうにすごいです。任天堂とはほとんど関係のない糸井と、自分の会社のエースの宮本さんと、関係としては下請け会社の社長の岩田さんを呼んで、3人に経営の話をしているんですから。

柿内 それはできないですね。

加藤 しかも、いわんや、その人を社長にしちゃうわけですもんね。当時42歳とかで。あんなでかい会社の。

柿内 すごいというか、できないですね。

加藤 できないですよね。

永田 42歳って、ほんとにすごいですよね(笑)。

加藤 みんなもう過ぎちゃってるじゃないですか。

永田 とっくに過ぎてます。

古賀 できないですよねー。

柿内 あ、まだ過ぎてないです。

加藤 失礼しました(笑)。2、3年後かな。任天堂の社長、どう?

古賀 (笑)

柿内 固辞させていただきます。

一同 (笑)

永田 この本の中で、ほんとはあるべきなんだろうけど、実際に語られていないから、まったくない部分があって。岩田さんが任天堂の社長になるときお話は、ぽっかりないんです。

加藤 ああ、聞きたかったですね。

永田 でも、本人がそれを語るわけにいかないし。

加藤 たしかにね。

古賀 それこそプラスがない。

永田 そうなんです。だから、どのメディアでも語ってない。

加藤 あと、山内さんの本もないですよね。

永田 ないですね。

加藤 本にするかわりに、岩田さんと宮本さんと糸井さんを読んで、いろんな話をされていたんですかね。

永田 じつは、この本の中で岩田さんが山内さんについて語る箇所は、ある取材で収録したんですけど、ぼくが原稿にまとめてチェックしてもらったときに、岩田さんが「いつか使うけど、今はやめときましょう」と言って載せなかった部分なんです。でも、この本には山内さんの名前が登場するべきだと思ったので、任天堂の方と話して、許可をもらったんです。だから、公式に文字にするという意味では、自分が社長になる話も、山内さんを語ることも、岩田さんは社長のプロとしてやってなかったんです。

加藤 絶対おもしろい話なのに。

永田 (笑)

古賀 もうひとつ、質問をいいですか。加藤さんと柿内さんに聞きたいんですけど、おふたりだったらこの本をどう編集しましたか?

永田 あ、それは聞きたい(笑)。

加藤 急に難しい質問‥‥。

永田 回答者は古賀さんも含めた3人にします。その質問はぼくがしたことにします。

古賀 (笑)

柿内 ああ、どうするかなぁ‥‥。岩田さんが亡くなったあとに、会ったことがないままってことですよね。

古賀 素材はあって‥‥。

柿内 なかなかそういうのはつくったことないですけど、自分なりに「岩田さんとはなにか」をつかまないことには、何を主軸にするのかがわからないから。たぶん、まず聞くんでしょうね、会ったことある人に。聞いていって、例えば「ハッピーにしたい」が岩田さんの行動原理なんじゃないかと思ったら、それを主軸に構成を立てていくかなぁ。

加藤 ぼくだったらどうするかな‥‥。出発点は柿内さんと一緒で、今あるテキストも全部読んで、人に聞いて、どこをコアにすべきかを決めます。そして、読者を誰にするかを決める。

永田 ターゲットみたいなことですか。

加藤 言い方が難しいんですけど、どんな人が読んで、読んだあとにはどんなふうになるといいな、ということを、ぼくは考えるタイプです。「32歳のどこどこに勤めてる田中さん」とか、名前が浮かぶぐらい詳細に決める。

永田 ターゲットは、任天堂ファンになるんですか?

加藤 任天堂ファンじゃないほうに向けますね。せっかくつくるんなら、いっぱいの人にこの話を読んでほしいじゃないですか。任天堂ファンよりそうじゃない人のほうが、たぶん数は多いので、単純にそういう理由です。それにこれは相当普遍性がある話だから、そういう意味でもなるべく多くの人に届けたほうがいいと思うし。たぶん僕がすごく努力するのは、読んだ人が「トレースしてみたいな」と思えるぐらいの構成にするという部分だと思います。それがうまくいくかどうかわかんないけど。

永田 実生活にそのまま役立てたりとか?

加藤 そこまで簡単な話じゃないと思いつつ、なんか人生に役立てることがちょっとできたらいいなということはわりと考えるかな。

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岩田さん』を真ん中に置いて話そう。

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