脳性まひ者のひとり暮らしである。57歳とはいえ、とっさに動けないパソコンに疎い。加えて特有に聞こえる言葉を使う。100歳のおばあちゃんより、ややこしいかも?
おばあちゃん化した体を持つ私は、ご多聞に漏れず、インフルエンザや新型ウィルスにおびえている。なにしろウィルスというやつは目に見えない。結果、毎日髪と体を洗うようになった。最近、自分史上最高に清潔感を保っている。 パソコンもウィルスにかかることがあるのを身をもって知ったのは、今冬はじめ。
足腰も痛く外出もままならない。「家で一人いる長い時間のおともに、犬が飼いたい」の欲望はおさまらず、こそこそこつこつパソコン検索。その時だ! 「このパソコンはウィルスにかかっています。画面のフリーダイヤルに今すぐ電話をください。ピーピーピー」と、パソコンから警告音声が流れてきた。けたたましい警告音は、静まり返った夕方の部屋中に響き続ける。電話言われても……私どどどないしょー?!
初めて聞くパソコンの声に気が動転した。 私はパソコンに詳しい知人の顔が思い浮かんだ。彼は学生の頃から私の特徴を知る。人生のピンチの時に「たすけてー」と言えるたった一人の先輩だ。事の次第をメールしてから電話をかける。
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