少しのひっかかりが、たまらない

「モテる文体とはなにか?」を徹底的に分析する連載です。今回は、三島由紀夫さんの(なにそれ?)と見過ごせなくなる、独特な言葉の合わせ方について解説します。書評ライター・三宅香帆さんの著書『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』から特別収録。


三島由紀夫の対比力
プラスとマイナスが合体すると、最後まで読まされる。




そりゃ文章なんて、読みやすければ読みやすいほどいいに決まってる。
なめらかに目がすらすらすら〜っと滑っていくような文章が最高。

って、ずっと思っておりました。

でも、どうだろう。微妙に意見が分かれそうな話をあえてしますよ。
読みやすい文章って、本当に、手放しでいいものなの? 
読みやすい文章って、もしかしたら、あんまり読み手に心に残らなかったりしない?

思うんですよね。
人の心に残すためには、ある程度の「でこぼこ」が必要なんじゃないかって。

もちろん、なに言っているのかわからなかったり、主語と述語の関係がおかしいとかじゃだめだ。「でこぼこ」にもセンスがほしい。じゃあ、センスのいい「でこぼこ」ってなんだろう。

氷のように清潔。ちょっと変な言い方だと思いません? 
「清潔」という言葉から、なかなか「氷」は思い浮かびません。

でもあえてここで「氷のように清潔」と表現することで、「清潔」という言葉が気になる存在になっています。

もし、この文章から「氷のように」を削除すれば、「感情」とか「愛情」と同じ感覚で、「清潔」をさらっと読んでしまうかもしれない。
「人間の感情から離れてる時だけが清潔」なんて象徴的なことを言っているのに、そのことに読み手は気づきづらい。
すると、セリフ全体の印象が薄くなる感じがしますよね。

だけど「氷のように清潔」なんて言われたら、見逃すことはできません。
どんな清潔さなのかを考えさせられながら、以降の文章を読むことになります。

…って、なんでこんなに「でこぼこ」した感じを受けるのか。

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文芸オタク女子の バズる文章教室

三宅香帆

こんな書き方もありだったのか! 文芸オタク女子が暴露する、「モテる文章の秘密」がいっぱい。文章を書くという行為が、今よりもっと面白くなるはずです。

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m3_myk cakes連載更新されました🙆‍♀️バズる文章教室の中身が試し読みできまーす! 今回は三島由紀夫の文章の「修飾(つまりは文章に施すスパイスの作り方)」について。 三島、最近公開された映画もみにいきたいです。 https://t.co/m9rzqHNJkQ 7ヶ月前 replyretweetfavorite