三島由紀夫の対比力
プラスとマイナスが合体すると、最後まで読まされる。
そりゃ文章なんて、読みやすければ読みやすいほどいいに決まってる。
なめらかに目がすらすらすら〜っと滑っていくような文章が最高。
って、ずっと思っておりました。
でも、どうだろう。微妙に意見が分かれそうな話をあえてしますよ。
読みやすい文章って、本当に、手放しでいいものなの?
読みやすい文章って、もしかしたら、あんまり読み手に心に残らなかったりしない?
思うんですよね。
人の心に残すためには、ある程度の「でこぼこ」が必要なんじゃないかって。
もちろん、なに言っているのかわからなかったり、主語と述語の関係がおかしいとかじゃだめだ。「でこぼこ」にもセンスがほしい。じゃあ、センスのいい「でこぼこ」ってなんだろう。
氷のように清潔。ちょっと変な言い方だと思いません?
「清潔」という言葉から、なかなか「氷」は思い浮かびません。
でもあえてここで「氷のように清潔」と表現することで、「清潔」という言葉が気になる存在になっています。
もし、この文章から「氷のように」を削除すれば、「感情」とか「愛情」と同じ感覚で、「清潔」をさらっと読んでしまうかもしれない。
「人間の感情から離れてる時だけが清潔」なんて象徴的なことを言っているのに、そのことに読み手は気づきづらい。
すると、セリフ全体の印象が薄くなる感じがしますよね。
だけど「氷のように清潔」なんて言われたら、見逃すことはできません。
どんな清潔さなのかを考えさせられながら、以降の文章を読むことになります。
…って、なんでこんなに「でこぼこ」した感じを受けるのか。
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