武田砂鉄
みのもんたがテレビから消えていく
唯一のレギュラー番組『秘密のケンミンSHOW』の司会を降板することになったみのもんた。良くも悪くもテレビの世界に君臨し続けた、みのもんたとはなんだったのか。武田砂鉄さんが考察します。
「ご勇退されることになりました」
みのもんたが「1週間で最も多く生番組に出演する司会者」(21時間42分)としてギネス認定されたのは2006年のこと。たった十数年前まで、朝も昼もテレビをつけるとみのもんた、という状態が続いていたのだ。ザッピングする人が多い時間帯と考えれば、私たちはかなりの頻度でみのもんたに接触してきた。好き嫌いを問わず、今日も明日もみのもんた、という環境を根底から疑う動きは少なかった。息子のスキャンダルの影響などで活動領域を狭めていったが、発言と風体がともに脂ギッシュで、その掛け合わせによって強いインパクトを投じるスタイルは、変わらない味付けだった。その味付けを誰が積極的に欲しているのかは見えなかったが、でも、出されると結構な人々が食べ始める、という、特殊な需要が続いてきた。
この3月で、唯一残っていたレギュラー『秘密のケンミンSHOW』(日本テレビ系)を降板することが決まった。読売テレビからは「ご本人の御意向もあり、後進に道を譲られ、ご勇退されることになりました」とのコメントが出ているが、この勇退に対し、芸能界から感謝の言葉があれこれ飛び交っているかといえばそんなことはなく、どことなく、こればかりはまぁ致し方ない、と納得の空気が流れている。
モットーは「軽薄に訊け」
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この連載について
武田砂鉄
365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む
著者プロフィール
ライター。1982年生まれ。東京都出身。大学卒業後、出版社で主に時事問題・ノンフィクション本の編集に携わり、2014年秋よりフリー。著書に『紋切型社会──言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)がある。2016年、第9回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞を受賞。「文學界」「Quick Japan」「SPA!」「VERY」「暮しの手帖」などで連載を持ち、インタヴュー・書籍構成なども手がける。
Twitter:@takedasatetsu