朝食は毎日同じ時間にとりたい。たとえそれが旅先でも。学会で一週間ほど滞在していたニューヨークのホテルの朝食が始まるのは7時15分だ。とはいえ、ラティーノの担当者がときどきは寝坊して、5分ほど遅れることもある。それでも僕はソファに座って、じっとカウンターが開くのを待っている。
出てくる食べ物はと言えば、大したことはない。シリアルやベーグル、そしてフルーツ、ヨーグルトで、温かいのは自分でいれたコーヒーや紅茶ぐらいか。でもときに氷点下になる朝、わざわざ近所のカフェまで歩いて行くのも面倒くさい。というわけで、便利に利用させてもらっていた。
何日目だろうか、僕と友人が座っていたテーブルの席に、ジムと名乗る中国人の男性がスッと座ってきた。聞けば彼は昨日、僕らの発表を聞いていたという。どうもありがとう。そして何気なく会話が始まった。
ジムの身の上話
そのときは、その会話が何日も続くとは思っていなかった。ただ旅先での軽い世間話、と思っていただけだ。けれども次の日もジムは気づけば僕のテーブルに座っている。時間をずらせばいいのに、こっちも半ば意地になって7時15分にはカウンター近くにいる。もちろん向こうもそれを察知していて、だから結局は捕まってしまう。
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