※ 『週刊ダイヤモンド』2019年6月29日号より転載(肩書・数値などは掲載当時)
「積立投資を幾らから、いつ始めればよいのか」
「自分のお金を①近いうちに使うお金、②予想外に備えるお金、③将来のために使うお金の三つに分け、このうち③だけ投資に回せばいい」
「積立ではなく、一度に投資するのはどうか」
「一方的に相場が上昇する場合は、最初に一括で投資した方がリターンは高くなる。しかし、大事なお金を大量に投資してそのまま放っておけない人は、積立でリスクを軽減しつつ長期に投資するのが合っている」
5月下旬、個人向けに資産運用サービスを展開するウェルスナビが、投資初心者向けに開いたセミナー。講師の柴山和久代表取締役CEOとセミナー出席者の質疑応答が続いた。
ウェルスナビの資産運用サービスは「ロボアド」と呼ばれ、パソコンやスマートフォンで年齢、年収、投資経験などを入力すると、AI(人工知能)がそれぞれの個人に適した運用ポートフォリオを提示する。運用の対象は世界中の株式、債券、不動産などに投資するETF(上場投資信託)や投資信託で、日本への投資比率は10%以下に抑えている。
月々数万円の自動積立でグローバル投資が実践できるとあって、サービス開始から3年で預かり資産は1400億円を超えた。約12万人に及ぶ契約者の6割近くが20~30代の若い世代だ。
各社の資産運用セミナーが関心を集める背景には、老後に待ち受ける厳しい生活への懸念がある。
現在60歳の人の4分の1が95歳まで生きるといわれている。だが、少子化や非正規雇用の増加で、国からの年金支給額は先細りが必至だ。企業からの退職金も平均1700万~2000万円で、ピーク時から3~4割減った。今後は退職金制度の採用企業自体が減っていく。
金融庁が6月に出した報告書では、年金収入だけの無職の高齢夫婦世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の家計は、毎月約5万円の赤字になり、95歳まで生きるなら、2000万円の金融資産が必要になると試算した。
「100年安心をうたった年金制度の欠陥ではないか」との野党の追及をかわすため、麻生太郎金融相が報告書の受け取りを拒否する事態にまで発展したが、この報告書が示した老後の家計収支は客観的なものだ。
元データは総務省の「家計調査」であり、全支出から税金や社会保険料を引いた消費支出は23万5477円。家のリフォーム費用や、民間の老人ホームなどの介護費用を含まない“かつかつ老後”の家計収支である。
生命保険文化センターが4056人を対象に行ったアンケートによれば、ゆとりある老後の生活費の平均は34万9000円。総務省の家計収支の実収入との差は約14万円。ゆとりある老後を過ごすには、95歳までの30年間で、5000万円の金融資産が必要になる計算だ。
もちろん、老後に必要な資産は、個々人の収入・支出の状況やライフスタイルによって異なる。だが、誰もがいつまでも元気で働き続けられるわけではない。95歳まで生きるとして、2000万円の金融資産で十分と考えている人は少数派ではないだろうか。
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