司馬遼太郎の撮影力
一緒にその場にいるような気分になって楽しい
自分の目を通して見た景色って、なかなか言葉で伝えられないもの。
あんなに素敵な景色だったのに、あんなに面白い光景だったのに、それがどんな“絵”だったのか、他人にイメージしてもらうのは難しい。
でも一方でプロの文章を読んでいると、情景がぶわっと浮き上がってくることがある。
画像として見えるというより、まるで映像として動いているような。
とくに時代小説家さんは、絵を言葉に変換する能力が高い。
「江戸の町なみ」や「城内の合議」や「合戦の様子」なんて、誰もが知っているシーンなのに、作家さんによって描かれ方が違う。
しかも大勢の武士が激しくぶつかりあう戦場なんかを、臨場感たっぷりに「言葉」だけで表現できてしまう。
どう見せているのか。どう切り取るのか。
オリジナリティのある景色の描き方を、時代小説の大家・司馬遼太郎先生から学んでみたいと思います。
まるで書き手と同じ景色を見ているような気持ちになる文章です。
でも、もし仮に司馬遼太郎さんと同じ景色を見ていたとしても、普通の人にはなかなかこんなふうに再現できないでしょう。
たとえば私だったら、そこがどんな場所だったか記憶をたぐり寄せながら、湖が近かったとか、古びた街だったとか、天気は良かったとか、暑かったとか、情報をバラバラに並べてしまうだろう。
じゃあふつうの人と、司馬先生の書き方の違いは一体なんだろう?
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