開高健の実直力
出来事をできるだけ丁寧に、正確に伝えようとする誠実さ。
文章を短く、いらないところは削ろう。
キャッチなー言葉を使って、わかりやすく書こう。
…というのが文章術の常識だと、私自身は信じてきました。
でもその一方で、自分の「感覚」とか「感触」まで、短く削ぎ落すことはないのかもしれない …と思っています。
あまり歯切れのよい言葉を使いすぎていると、文章が、自分の言いたいことから、離れていってしまうことがある。
文章のプロたちは、自分の言いたいことを無駄にしない。
言うなれば、“もったいない精神”です。
自分の五感が得た情報を、あますことなく言語化する。
そうそう、そういうところまで言語化してほしかったの。私もそういうことが言いたかったの。そう思わせてくれる。
なぜそんな言語化ができているかと言えば、それはもちろん懸命に言葉を選んだすえに生まれた文章だから。だけど一方で、むしろ、「ひとことで言うことをあきらめた結果」でもある、と私は思うのです。
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